「人生の主導権を誰かに譲り渡したくない」
以上、私自身のトライアルを踏まえて申し上げますと、少なくとも東京近辺、あるいは似たようなシェアサイクルの仕組みがある名古屋・大阪・仙台などの都心部では、しょぼい起業を軌道に乗せるまで、あるいは運悪く行き詰まったとしても、再起するまでの間「電動アシストシェアサイクル配達員」として働けば十分やっていけるでしょう。
誰かの善意や公的扶助を当てにしない完全な自助努力を前提とした場合、しょぼい起業に目下かけられる“保険”としては、これがもっとも万人向けで確実と思います。
「ギグワーカー」というあいまいな立場は、ともすれば批判の的となりますが、それは結局「収入源や意志決定をすべてプラットフォームに譲り渡し、生殺与奪を握られるような働き方が不安定だから」というのが根本的な理由だと思われます。
しょぼい起業に関心を抱く人はすでに経済的・精神的に独自の道を模索しており、また少なからず「人生の主導権を誰かに譲り渡したくない」というタイプでしょうから、この点での心配は杞憂といえます。
また、立場があいまいだからこそ、多くの店舗の舞台裏を見て回ることがなんとなく許されているのも事実なのです。あなたの目的意識が明確で、また健全な好奇心を失っていなければ、ギグワーカーの世界は有益な刺激に満ちています。
ムダのないチェーン店のオペレーションからヒントを得たり、要領を得ない指示出しに振り回されて反面教師を得たり、あるいは1つの厨房にいくつもの専門店の看板を掲げた「ゴーストレストラン」から飲食業の最新サバイバル術をキャッチしたりできるのが、しょぼい起業とギグワーカーを兼ねるハイブリッド経営の真髄です。