氷菓メーカーの赤城乳業(埼玉県深谷市)の主力商品「ガリガリ君」が、今年発売40周年を迎えた。今では年間4億本超を売るヒット商品だが、一時は「歯茎が気持ち悪い」とキャラクターが敬遠されたこともあった。なぜ「国民的キャラ」に変われたのか。アイス評論家のシズリーナ荒井さんが解説する――。

ユニークな発想から生まれた「赤城しぐれ」

1961年に設立された赤城乳業は、氷菓子事業では今年で60周年の老舗だ。31年に創業された広瀬屋商店を前身として、「赤城乳業」と商号を変更したのちに株式会社となった。

ここで面白いのは、社名に「乳業」と入っているが、チーズやバターなどの乳製品は製造していないことだ。商号変更した当時、すでに業界大手では「雪印乳業(現:雪印メグミルク)」「森永乳業」「明治乳業(現:明治)」など業界を席巻している社名には必ず「乳業」が入っていた。“既存の乳業メーカーに追いつくぞ!”という決意の表れを感じ取れる。

東京オリンピックの年(64年)に誕生した「赤城しぐれ」は赤城乳業の柱となるロングセラー商品となった。駄菓子屋を中心に人気を集め、発売した年には4000万個を売る大ヒット商品となり、これを柱にして、赤城乳業の事業は徐々に拡大していくことになる。消費者に愛された要因は、庶民の味であるかき氷をカップに詰め、場所を選ばずにどこにでもかき氷を持ち運べて食べられる点だ。当時としては画期的な商品だった。このユニークな発想や着眼点こそ赤城乳業の真骨頂ではないか。

赤城しぐれ
筆者撮影
(左)アイスストッカー(アイスショーケース)の上に置かれていたスプーン入れ(右)赤城しぐれ

ちなみに、「赤城しぐれ」のふたの部分に書かれていたアルファベット「ABC」にも、実は赤城乳業の熱いメッセージが盛り込まれていたことを知っているだろうか? 赤城乳業の広報担当者によると、A:Akagi(赤城)B:Better(ベター)C:Cream(クリーム)の略だそうだ。最後のCについては「乳業」への想いが込められているのではないかと私は思う。

赤城しぐれ蓋
筆者撮影
この「ABC」の意味を初めて知った時に思わず、声をあげてしまった。