誤解による二次被害が起きやすい
適応障害のなによりの治療は、ストレス源から離れることです。特定の人間関係が原因であれば、その人から離れる、職場環境が原因ならその職場から離れるということです。時には症状に合わせて薬物治療を行うこともありますが、あくまで対症療法であり、根本的な治療解決にはなりませんので、やはり大元のストレス源を取りのぞくことが大切です。
職場の人間関係や環境がストレスの原因となっている場合、そのストレス源とのつながりを感じているときに症状が出やすいため、平日はずっと症状が出ていても、週末や連休になると元気になることがあります。ですから、A子さんのように「仮病でしょう」と言われて誤解され、二次的に苦しんで症状がさらに悪化するということが多い病気でもあります。
ただし休職して会社とのつながりが薄くなれば、早ければ1~2週間で病状はかなり改善します。長くても2カ月ほどで回復するでしょう。A子さんにも、「いったん休みましょう」と休職を勧めました。
休んだ後は新しい環境に復帰
2週間休み、かなり落ち着いたので、いざ職場復帰することになりましたが、だからといって同じ場所に戻ると、また同じ症状が出るだけです。そこで復職の前に、僕から会社に配置転換をお願いしました。そしてA子さんは全く別の部署で新しいスタートを切ることになりました。
このように、産業医から会社に患者さんの配置転換をお願いすることはよくあることです。ただ会社としては配置転換したあとに、また同じことが起こっては困ります。ですから、「原則1回きり」という約束のもとで配置転換するのがスタンダードです。
ただ、大企業だと部署を異動できますが、少人数の中小企業だとそうもいきません。その場合は、例えば指示系統がダイレクトにいかないように、本人とストレス源の上司の間にほかの人に入ってもらい、その人から指示を出すようにしてもらってストレス源の上司との直接のやりとりがなくなるようにしてもらいます。
テレワークがストレス源の場合は、テレワークをやめてもらうようにします。現状、多くの会社では政府の推奨する「在宅7割、出社3割」としているところが多いので、出社3割のほうになんとか入れてもらい、なるべく出社できるように会社に要請します。