「将来の首相候補」だが、菅首相にもはしごを外され……
報道されている限りでは、休業要請に従わない店に今回のような対応をすることは、事前に政府部内でコンセンサスを得られたものだった、とされている。つまり、西村大臣が独断で行ったというよりスポークスマン的な役割だった可能性がある。それにもかかわらず、大衆やマスコミの理解や支持を得られなかったのは、ふだんの共感能力の欠如の結果のように思えてならない。
民意を読むという点では、過労のために休養と言い出したとたんに人気が急上昇したのをみるや、体調不良をおしてという形で選挙応援に回り、自分の子飼いの都民ファーストの候補を逆転勝利に導いた小池百合子都知事と対照的である。
もうひとつ、経済再生大臣として不適格なように思えるのは、先の予想を立てられない人間ということもある。
経済を再生させ、消費を回復させるためには、大衆心理を読み、その結果どうなるかの予測を立てる能力は重要な要素となるだろう。実際、日本は30年にわたって、金融政策や財政政策を行ってきたにもかかわらず景気が全く回復しないのだから、行動経済学のような心理学的な消費行動の予測がないと経済が回復すると思えない。
今回の失言もそのような心理の予測ができない人であることを露呈したわけだが、私や周囲の記者に不遜と思われるような態度を取ることで、どういうことが起こるかの予想ができなかったとしたら、こんな人に経済再生を任せていいかはなはだ疑問であり不安である。
西村氏は「将来の首相候補」のひとりと目されているが、ムラ社会の永田町においては、もう少し共感能力を身に付けないと、いくら学歴が高く頭がよくても、味方から足を引っ張られるのがオチかもしれない。
そこで、必要なのは人の振り見て我が振り直せ、の精神だ。私たちも、西村氏の失態を他山の石として、より共感能力を磨いていきたいものである。