たった一人の母親からの拒絶
心理士から「家族と連絡を取らないで」と指示されたのは、私が自分の意思とは関係なく、衝動的に死のうとすることが増えたからだった。
母親は私を実家に連れ戻そうとするとき、必ず私のことを強く否定した。実家で殴られ続けたことがトラウマとなっていることを伝えると「あんたの傷なんて大したことない」と言い、私がうつ病と複雑性PTSDを患って闘病していることを打ち明けると「あんたにとって、なにがストレスになることがあるの? あんたが病気になんてなるはずない、あんたは私の唯一の支えなんだから。その医者はヤブだ、信じるな」と、半狂乱になって私の傷をすべて否定した。
母親を含んだ家族との連絡を一切絶つようになって、私は今、ゆるやかに人間らしい生活を取り戻しつつある。母親からの連絡でパニック状態になり、とっさに橋から飛び降りようとすることも、駅のホームで電車に飛び込もうとすることもなくなった。
自分が置かれていた状況を受け止め、自分が感じていたつらさを認め、自分をまるごと肯定してあげること。カウンセリング治療を通して何度も何度も、誰にも助けてもらえなかった過去の自分に会いに行き、まるで成仏させてやるかのように、ただただ当時の自分を抱きしめる作業をくりかえしている。
自分の人生を生きる、ということ
カウンセリングにかかる費用は、私の場合は1回あたり2000円。知人や友人が通っている病院では、だいたい3000~4000円が相場だった。自立支援医療制度を使えば、医療費や薬代の負担は一割になる。通院治療を続ける場合は医療費がネックになるケースが多いため、病院の窓口で聞けば、詳しく教えてくれたり、申請を代行してくれたりするはずだ。
共依存から解放されるには、第三者による介入が不可欠だと思う。しかしながら、「親子」という極度に閉鎖的な関係に他人が割って入ることは、決して簡単なことではない。たとえ行政が介入しようとしても、親から子へかけられた呪いは強力で、引き離すことが難しい。
それでも、子供が「逃げたい」と思っている場合は、まだチャンスが残されていると思っている。もしもその小さな声が外部に漏れ聞こえさえすれば、第三者側からアプローチをかけて親子の病的な関係性を治療するか、保護等の手段を使って物理的に引き離すことも不可能ではない。
だからこそ、私はこうして文章にして、それが当事者に届けばいいと思っている。共依存は、私自身がそうであったように、子供が成人したあともずっと続いていく。どこかで関係を断ち切らねば、死ぬまで世界でたった2人だけになってしまう。
「ここで生きていくしかない」と思っている人たちに、それ以外の生き方があることを、具体的に助かる道があることを知ってほしいと、心から思っている。