「とはいえ、幼稚園児に電気設備の専門書を見せてもわからないので、『読み聞かせ』をしていました」と正晴さん。

小学校に上がるころには「自分で読めるようになりたい」と、専門書の難しい漢字を書きとり、意味を調べて覚えるように。そして小学2年生の夏には、第二種電気工事士の試験に向けて勉強を始めた。

設問のパターンや解き方のテクニックも伝授

正晴さんが気を付けたのは、本人の気持ちを大事にし、勉強を押し付けないこと。「1人にしないように」と、二種の試験は、作業療法士で電気についてはまったくの素人だった母の純恵さんも一緒に勉強して受験。一種は、すでに免許を持つ正晴さんも加わり、3人で試験に挑んだ。

テレビは居間から撤去。毎日午後11時ごろまで勉強した。友達が遊びに来ても「勉強があるから」と断った。絆翔さんは「勉強はおもしろかったので、イヤになったことはない」と言い切る。

試験問題は、電気工事士のほか配管やクレーンなど40以上の資格を持つ正晴さんが徹底的に研究。過去20年分の問題を分析して、設問のパターンや解き方のテクニックも伝授した。

両親が、過去20年分の問題を研究して練習問題を作成。試験問題を読むために、少1のころからこんなに難しい漢字の読みと意味を勉強していた!
両親が、過去20年分の問題を研究して練習問題を作成。試験問題を読むために、少1のころからこんなに難しい漢字の読みと意味を勉強していた!

合格したときは、「努力が報われてうれしかった」という絆翔さん。電気工事専門誌から声がかかって連載を持ったり、テレビ番組に出たりと、世界が広がるのも楽しいという。

資格を取ったあとも、身に付けたスキルを忘れないようにと、自室のエアコンを取り付ける際の配線を行うなど実践を欠かさない。2019年の台風では、正晴さんのサポートを得ながら、漏電のため停電していた祖母の家の屋根裏に入って配線を直した。

学校では、「答えは1つなのに、いろんな導き出し方があるのが楽しい」数学が好きだという絆翔さん。最近はSDGsや再生可能エネルギーにも興味が広がっている。目標に向けて努力し、結果につなげた経験は、将来にも生きるだろう。