習近平は中国の歴史修正に熱心

中国共産党は21年7月1日に、北京で創立100周年の記念大会を開く。しかし軍事パレードがないなど、大方の予想より小規模になりそうだ。最近の中国は、共産党の歴史をあまり強調しなくなっている。習近平の「毛沢東離れ」が理由だ。

習近平は「毛沢東回帰」といわれたほど毛沢東の影響が大きかった。しかし、2018年の憲法改正で「終身国家主席」が可能になると、長期的な国家戦略のうえで、「建国の父」が毛沢東ではマイナスだと気づいたようだ。

毛沢東には暗い歴史がつきまとう。戦時中の「長征」では、1万キロ以上も徒歩で移動し、国民党軍と戦うなかで当初10万人ほどいた共産党軍は数千人に減った。抗日戦争で日本と戦ったのは国民党だったのに、共産党が勝利したと偽っている。戦後は、大躍進政策と文化大革命で数千万人の死者を出し、その間に大粛清を進めた。そのような歴史から、毛沢東は「建国の父」にふさわしくない。それでは誰ならいいかといえば、習近平が選んだのは孫文だ。清朝を倒した辛亥革命の中心人物で、近代国家の道を開いた孫文こそ「建国の父」にふさわしいというわけだ。

しかし、その孫文が率いたのは国民党だ。その国民党といえば、第2次世界大戦後には共産党と戦って台湾へ逃亡。いま「建国の父」を孫文に乗り換えようとする習近平が台湾を欲しがる最大の理由はこれだ。

台湾を取り込んで「一つの中国」が実現すれば、中華民国を打ち立てた孫文も正式に中華人民共和国のルーツになる。「われわれは抗日戦争で日本軍に勝利した」と主張しても(カイロ会談などに出席し、ポツダム宣言にも国民党の蒋介石がサインしているので)ウソにならない。

毛沢東と違って孫文のイメージはクリーンだから、習近平は「建国の父は孫中山(孫文)」と言いだし、中国の新たな歴史をつくろうとしている。

台湾を取り込む国共合作は、毛沢東にもできなかったことだ。習近平は「“終身皇帝”となった自分にはできる」と、この物語を完結させようとしている、と私は読んでいる。

習近平には、何か得体の知れないものに取り憑かれている印象がある。08年の北京五輪で、中国は北京の街を大改造した。そのときに思い出したのは、ヒトラーがベルリンを世界首都にしようと大改造したことだ。習近平は、北京を21世紀の世界首都にしようと考えているのかもしれない。漢民族をすべての支配者とする最近の習近平は、あらゆる面で(ドイツ民族がすべての上だ! と叫んだ)ヒトラーに似てきているように私には見える。

(構成=伊田欣司 中国通信/時事通信フォト=写真)
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