韓国経済の“エンジン”がストを決行
6月21日、韓国最大の財閥であるサムスングループの主業企業であるサムスン・ディスプレイにてストライキが発生したと報じられた。これまで、サムスングループはストライキと無縁といわれてきた。サムスングループは大きな曲がり角を迎えつつあるようだ。
朝鮮動乱の後、韓国政府は基本的にはサムスン電子や現代自動車など財閥系大手企業の輸出競争力を高め、発揮することによって成長を遂げてきた。特に、サムスン電子は韓国経済の成長の牽引役やエンジンと評されるほどの重要企業だ。サムスングループだけでなく、韓国経済にとっても、今回のストライキ発生の意味は重いだろう。
それに加えて、米国への上場を果たした通販大手のクーパンでは、創業者が海外事業への注力を重視し始めたようだ。韓国では、企業家が自由な発想を膨らませ、新しいモノ、サービスの創出やプロセスの改善などのイノベーションを目指すことが難しくなっているとの印象を持つ。その一因として、労働組合を主な支持基盤の一つとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済政策の影響は軽視できない。
創業から“無労組経営”で成長してきた
創業以来、サムスングループは“無労組経営の原則”を続けてきた。それは、サムスン電子をはじめとする傘下企業の成長に無視できない影響を与えた要因の一つと考えられる。
サムスングループの成長に大きな足跡を残したのが、李健煕(イ・ゴンヒ、故人)前サムスン電子会長の経営理念だった。1993年に同氏は、“妻と子供以外すべて変えよう”、のスローガンを打ちだした。その意味は、個々人が常に新しいことに取り組み成長を目指す、というものだ。
その理念のもと、サムスン電子は家電、ディスプレイ、スマートフォン、ファウンドリー(半導体の受託製造事業)など成長期待の高い先端分野に経営資源を迅速に再配分する事業戦略を実行し、組織全体の新陳代謝を高めた。その結果、財閥全体で業績が拡大し、従業員は相対的に高い給料を手に入れた。