ダイムラー社のインスタ投稿が大騒ぎに

ちょうど3年前、ダイムラー社が自社のインスタグラムに、海を背景にした白いメルセデス・クーペの写真をアップし、そこに「Look at situations from all angles, and you will become more open.」という英文をつけたことで大騒ぎになった。「物事を色々な側面から眺めよ。さればあなたはもっとオープンになれる」

ダイムラーAG本社
写真=iStock.com/Gaschwald
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政治的でも挑発的でも、もちろん差別的でもない。どちらかというと退屈なほど当たり前の文章だが、大騒ぎになった理由は、これがダライ・ラマの言葉だったからだ。

ダイムラー社はこれを直ちに削除。翌日、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で、前日のポスティングは「大きな誤り」で、「中国国民の気持ちを甚だしく傷つけた」。「今後は中国の価値観への理解をさらに深めたい」と反省し、「心より謝罪」した。

ちなみに、中国国内ではインスタグラムは見ることができないから、嵐のような抗議は、やはり在外の中国人たちの手によって行われたわけだ。そして、ダイムラー社はそれに対して中国国内で陳謝する羽目になった。

対して日本の姿勢はどうか?

ただ、私たちはドイツが中国に擦り寄るのを批判するわけにはいかない。なぜなら、日本の中国に対する態度も、ドイツと変わらない。産業界は中国市場には逆らわず、政府は交易の拡大を全力でサポートする。第4の権力を自認するメディアも、人権蹂躙に平気で目をつむる。

民主主義国家の中で、現在、強硬な対中政策に出ているのが、いうまでもなく米国だ。昨年10月、国連では、米国、英国、EUが中国の人権蹂躙に抗議し、日本もその共同声明に署名した。その後、米国、英国、ベルギー、カナダ、リトアニアなどの議会は、ウイグルの人権侵害をジェノサイドと認める決議案を採択した。

日本でも非難決議案の採択を進めようという動きが進んでいたが、普段はすぐにEUに追随する日本政府がこの時ばかりは行動せず、6月16日、通常国会は閉会した。非難決議については、立憲民主党、維新の会、国民民主党、それどころか共産党までが大筋で合意していたというのに、肝心の与党、自民・公明が躊躇した。

与党と中国との癒着ぶり、いや、与党の中国への服従ぶりがはっきりと国民の目に見えた一瞬だった。