広告より信憑性のあるクチコミの力
ワークマンと業務スーパーの更なる共通点は、消費者が自分なりに使い方を工夫して、それをSNSなどで発信していることです。
たとえばバイクに乗るのが趣味だという人が、SNSに「ワークマンの職人向けのレインスーツは、安くて丈夫で長持ちだから、ツーリングにぴったりです」と書く。あるいはキャンプが趣味だという若い女性が、「溶接工向けの『綿かぶりヤッケ』は、火の粉を浴びても服に燃え移らないから、キャンプに最適」と、自分がそれを着ている写真を投稿する。
このように企業側が意図しない意外な使われ方は、「お得な情報」としてインターネットの世界を駆け巡り、ときに商品が売り切れるほどのムーブメントを起こします。この動きに着目したワークマンは、ブロガーやインスタグラマー、ユーチューバーなどを「アンバサダー」に任命し、商品開発の際に意見を聞いたり、情報発信に務めてもらったりしている。
ワークマンにとって、アウトドアやスポーツウェアは専門外です。しかしアンバサダーの意見を取り入れれば、その分野での消費者のニーズをつかめる。さらに「三度の飯よりキャンプ好き」みたいな人に、「この袖に折り返しがあることで、雨が入ってこないんです」と言ってもらえれば、タレントが広告で薦めるよりも情報の信憑性が高い。
情報発信するところまで楽しめる
業務スーパーのほうは、SNSで発信力のある人をアンバサダーにしたりはしていないようですが、「業務スーパーではこれを買うべき」「業務スーパーの大容量の冷凍野菜を使い切るにはこのレシピ」などの情報は、主婦のブログやインスタグラムでは、もはや定番ネタ。そこでは業務スーパーは「業スー」と略され、親しまれています。
安くて品質がいいのは、もはや当たり前。自分で工夫する余地を残し、情報発信するところまで楽しめる。これも業務スーパーとワークマンに共通する強みなのです。