お客さんは、いくらだったら驚くか

業務スーパーとワークマンは、どちらも「低価格」が魅力のひとつ。自社で企画から販売までを一貫している両者だからこそ、低価格が実現できているのでしょうが、私はおそらく「これはいくらで売る」というように、価格を先に決めているのではないかと思います。

一般的に商品の値付けは、原価に利益を足す「積み上げ式」で決めていきます。しかし私が一時期関わっていた安いことで有名な某メーカー小売では、「これがいくらだったら、お客さんは驚くのか」という発想で、先に価格を決めていました。

消費者がびっくりするということは、今まで世の中になかったということです。常識的に考えれば、そんな値段でつくれるわけがありません。「この値段でつくれ」と言われた担当者は、椅子から転げ落ちるくらいびっくりしていましたが、トップが「少し安い程度の値段だったら世の中に出す意義がない」と言う以上、つくるしかない。担当者は小さなパーツの一つひとつを見直して調整を繰り返すことで、目標の価格を実現していました。

実質本位のコスパ重視

こんなふうに業務スーパーやワークマンも、値段を先に設定しているのではないでしょうか。

最近の消費者は「実質本位のコスパ重視」。安くていいものを求めます。その点、業務スーパーもワークマンも「プロ向け」なので品質は保証済み。だから業務スーパーで買い物をしても「節約している」という引け目を感じません。実際にプロの料理人らしき人たちがやって来て、大量の食材をぶら下げて帰る姿を見ていると、「目利きが選んだ、いいものを買っているんだ」と胸を張ることができるのです。