いつのまにか切り崩されていた社内取締役たち

ところが2月10日に石松氏や久野氏ら社内取締役たちは雲行きが怪しくなっていることに気付いて驚く。その日の取締役会で、松澤氏がセクハラ問題に何ら触れることなく、会長に退いたうえで近藤取締役を後継社長に指名する動議を提出したのだ。会長に退いて社内で影響力を温存し、責任を追及する邪魔な取締役らのクビをはねるつもりだったのだろう。

松澤氏のセクハラ問題に対処するために足並みを揃えていたはずの石松専務と伊藤一浩常務、下田剛取締役、久野力取締役、そして当時は末席の取締役だった近藤氏らは、いつのまにか切り崩されていた。

切り崩しに動いたのが3人の社外取締役であった痕跡が、各種の資料や音声データに動かぬ証拠として残っている。しかも石松氏らはいつの間にか<松澤氏らと行動を共にしながら、セクハラを止めようとしなかった善管注意義務違反が認められる>と社外取締役らから責任追及を受けるようになった。

電気興業のウェブサイト
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取引先や経営トップと親密な人物が社外取締役を占めている

社外取締役は弁護士の太田洋氏と、元横浜中税務署長で税理士の須佐正秀氏、元SMBC日興証券副社長でSUZUKI NORIYOSHI OFFICE代表の鈴木則義氏の3人。関係者によると、太田氏と松澤氏は、遅くとも電気興業がアクティビストファンドの米スティール・パートナーズの標的になった2007年以来の付き合いで、太田氏が所属する西村あさひ法律事務所にとって電気興業は取引先である。

鈴木氏も「松澤氏と30年来の付き合いがある」(関係者)といい、社外取締役は電気興業の取引先からの出身者や、経営トップの知り合いで固められていたことになる。同じように取引先や経営トップと親密な人物が社外取締役を占め、企業統治が機能不全を起こしていたオリンパスと重なる部分が多いのだ。

しかもニュースリリースの「(3)利益相反の疑いのある取引」とは、西村あさひがSUZUKI NORIYOSHI OFFCEに支払いを求めたコンサルティング費用を電気興業に支払わせたことや、鈴木氏が代表取締役を務めていたエドモン・ドゥ・ロスチャイルド・日興との取引を指しているが、電気興業ではこれを問題なしとして片づけている。経営トップのお目付役であるはずの社外取締役がこんなことで疑われるだけでも恥であろう。

では電気興業はなぜ株主総会の直前になって、わざわざこれらの恥をHP上に掲載したのか。