【青木】これほどみっともない外交的失敗は近年珍しいでしょう。しかしそれも政権支持の右派連中はたいして問題視することもない。なのに韓国が相手だと途端に居丈高になり、けしからんと声を荒らげてふんぞりかえる。排外主義にしてもレベルが低い。政治や外交としてのレベルの低さに加え、強きに弱くて弱きに強がるというか、その心性の醜さにほとほと嫌気がさします。

上から見下し、かつ下から見上げる差別

【安田】日本に住んでるコリアンに対する見方にしても、日本社会では昔から差別と偏見を抱えている。在日は怖いとか貧しいとか犯罪者が多いとか、そういうデマに基づいた上から見下す差別はかつての世代には典型的にあったし、もちろんいまでもあると思うんだけど、現在は、上から見下す差別をがっちり抱え込みながら、下から見上げる差別も同時に抱えている人が多いと思います。

青木理・安田浩一『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』(講談社+α新書)
青木理・安田浩一『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』(講談社+α新書)

その典型が「在日特権」という言葉だと思うんです。在日コリアンは優遇されている、恵まれている――そうした見方。日本人は苦しんでいるのに、在日は生活保護を優先的に利用できる、日本人から福祉を奪っている。あるいは大学入試でも、日本人は英語だ第二外国語だと苦労しているのに、在日は韓国語で入試を通ってしまう。なかには在日コリアンは電気、水道の料金も免除されているのだと主張する者もいる。すべてデマです。あり得ない話です。

外国人のくせに恵まれている、自分より優遇されている、下駄を履かされているという意識ですよね。上からの差別を抱えながら、そこに下からの差別を持ち込んで、在日コリアンをわざわざ特別な地位に押し上げている。そういうところが昔との違いかなという気がしますね。

これは一度記事に書いたことがあるんだけど、「韓国の文句ばかり言ってるけど、アメリカとかロシアとかに言ったらいいじゃん」みたいな話をネトウヨにしたら、「あそこは外国だから」と答えた者がいました。一瞬わけがわからなくて。当然、韓国も外国なわけだけど、彼らにとっては、アメリカやロシアこそが外国なんですよ。物理的、精神的な距離感がある。

ところが韓国はネトウヨにとって、植民地という意識ともまた違っていて、類似した価値観、物理的に近い距離感が相まって、他の外国とは違うという感じ。取材相手はたまたまボキャブラリーが貧困だからそういう言い方をしたんだけど、特異な視点だけは伝わってきました。

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