夫のがん闘病を支えつつ、90歳超の義父母の介護も……

義母は、義父と同じ老健のショートステイの利用を開始した。薬の関係で車の運転をとめられている夫に代わり、知多さんが夫の通院の送迎をするため、家に義母1人置いておけなくなったからだ。

ベッド
写真=iStock.com/Willowpix
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「当時は夫に代わって私が畑仕事もしていました。その上、夫と義母2人のことを気にするのは、私にはとても無理でした」

義母は、「この歳で泊りになんか行きたかない!」「一人で家に居る!」などと言って拒否したが、知多さんは無視して、着替えなどをカバンに詰めた。

そして2017年3月。義父が死亡。94歳だった。

朝4時ごろに老健から電話があり、知多さんと義弟たちが駆けつけたが、すでに義父は息を引き取っていた。

しかし老健のスタッフが気を利かせ、義父の状態が悪くなったときに、すぐに同じ老健のショートを利用していた義母に声をかけてくれたため、義父の最期は義母が看取ることができた。

義父の葬儀は、入院中の知多さんの夫に代わり、義弟たちが進めてくれた。

「うちで引き取る気はないから、老健に入所させよう」

3月後半に入り、夫の退院が決定。

夫が退院して帰ってくるとなると、知多さんは夫にかかりきりになる。そこで義母のことを義弟たちに相談したところ、「うちで引き取る気はないから、老健に入所させよう」ということになった。

義母が老健に入所する日、上の義弟が車で送ってくれるというので、知多さんは任せることにした。

義母は、「いつまで老健にいる?」「迎えには誰が来てくれる?」などと何度も訊いてくる。知多さんは、「ずっと居るんですよ」と言いたいのをこらえ、代わりに「夫の具合がよくないので長くなると思いますよ。みんな『面会に行く』って言ってましたよ」とやさしく返事。

車が出発すると、知多さんは肩の荷が少し軽くなったように感じた。

その後、義母が借りていた介護用ベッドを返却し、代わりに退院して帰ってくる夫用の介護ベッドを搬入。退院の日は知多さんの娘がサポートしてくれた。

4月。夫の傷んだ腰椎を守るために、チタンを入れる手術をした。再び入院する際は、義妹の夫や下の義弟の妻が協力してくれた。

術後2日目。夫は薬の副作用で排尿障害があり、最初の入院から尿道にカテーテルを入れて排尿をしていたが、それが外され、昨日は尿瓶を使っての排尿ができたとのこと。

術後3日目。夫は薬の副作用でひどい便秘になり、最初の入院からずっと下剤や浣腸を使ってオムツに排便していたが、車椅子を使って廊下を移動するリハビリを行い、ポータブルトイレに自力で移動・排便することができた。

この頃、夫の介護認定調査をすると、要介護4だった。日常生活のほとんどに介助を必要とする重度の介護を要する状態だ。ただ、調査を受けたときはほぼ寝たきりだったためにその結果になったが、幸い夫は徐々に回復した。

5月。夫の退院が決まる。前回の退院時はストレッチャーに乗ったまま、介護タクシーを使っての帰宅だったが、今回夫は知多さんの車から降りると、杖をついて自分で歩いて帰宅した。