「厳しい時代に立ち止まらず、どう挑戦するか」
「未来を切り開くためには、俊敏な挑戦と失敗を含めた経験の積み上げこそが成長への糧」
これは三菱地所の根底にある考えです。
同社新規事業創造部の部長・小林京太氏はこう話します。
「三菱地所という会社は、創業以来、時代に合わせて、常に新しいことをやってきた会社です。いつなんどきも時代の求めることを、俊敏に見分け、変化に応じ、挑戦をしていく。その一方で、それを諦めない粘り強さを発揮する。厳しい時代になれば立ち止まるではなく、常に、どう挑戦するかを考えてきました」
また、そうした活動を続ける中で最も大切なことは、「発案者自らが事業に継続して取り組み、粘り強く諦めずに想いを持って取り組むことだ」といいます。
「変化する時代の中においても成果を出すためには、事業企画の当初の想いを大切に、継続して粘り強く取り組むことが必要。そのためには、当事者意識がある事業の発案者が、最も想いがあり、執着して継続的に取り組み、責任を持って策を打ってゆくことが、もっとも成果を出しやすいと感じています。
そのため現在は発案者をリーダーとして、プロジェクトを進めるように考えています。若い人をより登用しているよう見えるかもしれないですが、若いから、あるいは、その年齢を意識して登用しているわけではなく、成果を出すために発案者をリーダーにするという考えに至った結果、自然とそのような形になりました」
Zoomすらも不動産業界のディスラプターになり得る
現代の新規事業を立ち上げるという活動は、“新事業提案制度”が1999年にスタートし、募集の形態や実行までのプロセスなど形を変えながらも、中座することなく今日まで活動が進められてきました。
当初は一部の特殊な人たちだけのものというイメージが強く応募が限られる傾向が強かったものの、現在はより多くの社員に浸透し、入社年次を問わずに広く多数の応募が生まれているといいます。
変化する時代の中にも、状況を俊敏にとらえ、あらゆる策を講じながら市場に喜ばれる事業を作り出し成果を挙げる。こうした考えのもと、新事業を担う会社の取締役が30代どころか、入社1、2年目で審査を通過し、入社数年目のスタッフがリーダーを担務していく予定の案件もあるそうです。
新事業創造部の統括であり前述の「NINJA SPACE」プロジェクトのリーダーも務める那須井氏は、こうも語ります。
「世界に目を向ければ、不動産テックの企業はもちろんのこと、コロナ渦で急速に伸びてきた米国のオンライン会議システム・Zoom社も、一気に時価総額13兆円となり、不動産業界のディスラプターともなり得る脅威です。名のある企業だからといって安心していられる状況ではありません。そうした中で、多くのサポートを得ながら、クライアントやパートナ、グループ会社らと、失敗を恐れずに挑戦できる環境をありがたいと思っています」
イノベーションの多くは、挑戦と失敗から生み出される。積極的な失敗こそを評価し、「挑戦者」を応援し讃えていく文化も会社が育ててきたもと言います。