伝統的な巨大企業では「社長」になれるのは50代が普通だ。その中で、三菱地所の子会社では、この2年に30代の社長が7人も誕生している。ビジネスプロデューサーの三木言葉氏は「三菱地所は、若いから登用するのではなく、成果を出すために発案者をリーダーにしている。これこそが新事業を創造するのに必要な考え方だ」という――。
丸の内パークビルディングと三菱一号館、明治安田生命ビル
写真=時事通信フォト
丸の内パークビルディングと三菱一号館、明治安田生命ビル=2014年6月15日、東京都千代田区

巨大企業がなぜ次々に新事業を立ち上げられるのか

変化の激しい時代、社会や市場の課題を解決する「事業開発」の重要性はますます高まっています。また、世の中の課題を見つけてそれに応えるために創意工夫する事業開発の経験は個人のキャリア形成にも優位に働きます。

しかし多くの巨大企業は、経営者あるいは事業開発担当者において時代状況や変化へのニーズを認識しながらも、新しい取り組みを俊敏に事業として打ち出せないことに苦しんでいます。

そのような中で私が事業開発を伴走する三菱地所では近年、30代の新事業子会社の代表取締役や役員、プロジェクトリーダーなどが続々と誕生しています。

代表的なのは、2019年に設立されたエレベーター内プロジェクション型メディア「エレシネマ」を展開する「spacemotion(スペースモーション)」(代表・石井謙一郎〔36〕)、住みながら新しい体験ができる賃貸住宅“コリビング(Co-Living)”を展開する「Hmlet Japan(ハムレット ジャパン)」(代表・佐々木謙一〔37〕)、五感を解放する脱デジタル空間メディテーションスタジオ「Medicha(メディーチャ)」(共同代表・長嶋彩加〔30〕、山脇一恵〔30〕)、フィットネス施設の都度利用プラットフォームサービス「GYYM(ジーム)」(共同代表・加川洋平〔35〕、橋本龍也〔32〕)など。

コロナ渦に入ってからも、その勢いは止まることなく2021年2月には、多様な働き方を支えるワークスペースのマッチング支援サービス「NINJA SPACE」(プロジェクトリーダー・那須井俊之〔37〕)もプレローンチされ、丸の内エリアでの休憩時間のレストランやカフェなどの空間を活用したワークスペース提供を行うトライアルサービスを開始しました。

さらにこれからも発表を控えている案件が登場する予定であり、その多くが30代、さらには20代の代表あるいはプロジェクトリーダーにより立ち上げられます。

では、なぜ三菱地所のような巨大企業がこのような動きを加速できるのか。本稿では、三菱地所を例に事業を生み出すためには何が必要かを解説していきます。