防衛省が「ワクチンを無駄にしかねない悪質な行為」と抗議
防衛省が5月18日、自衛隊による東京都と大阪府での新型コロナワクチンの大規模接種を巡って毎日新聞社と朝日新聞出版社がそれぞれ虚偽の予約をしたとして両社に抗議文を送った。
これに先立ち、岸信夫防衛相は午前中の記者会見で「不正な手段によって予約することは、貴重なワクチンを無駄にしかねない悪質な行為だ」と強く訴えていた。
17日から始まった大規模接種会場の予約では、サイトに接種券番号や生年月日を入力する必要がある。しかし、防衛省は接種券を配る自治体の市区町村と番号を突き合わせておらず、架空の番号や生年月日でも予約ができてしまう。
毎日新聞と朝日新聞出版の記者は、この不備を確認するために実際に予約を行い、そのうえで「公益性が高い」と判断して毎日新聞やニュースサイトのAERA dot.に検証内容を掲載した。これに岸防衛相が噛みついたのだ。
「無理に急ぐと混乱する」との声に耳を貸さず
国家権力とマスメディア、報道される側と報道する側、この両者の対立はよくあることだ。
だが、今回の岸防衛相の「悪質な行為」との批判には驚かされる。そもそも政府が突貫工事のように大規模ワクチン接種を急いだ結果、こうした不備を招いたのである。本来なら早急に改善すべき問題だ。それを棚に上げて毎日新聞や朝日新聞出版を攻撃するのはお門違いで筋が通らない。
なぜ、政府はこれほどまでにワクチン接種を急ぐのか。これから菅義偉政権にとって東京五輪、自民党総裁選、衆院総選挙という大きなイベントが控えているからだ。菅首相は周囲の「無理に急ぐと混乱する」との声に耳を貸すことなく、ワクチン接種に突っ走っている。ワクチンによって東京五輪などを政治的に成功させ、首相の座を維持したいのだろう。