先行き不透明なこれからの時代を生き抜くためには、どんな力が求められるのか。親は子供に何をすればいいのか。『プレデントFamily』編集部が東京大学を含む難関大学合格実績の高い私立校の校長にインタビューした――(後編/全2回)。

※本稿は、『プレデントFamily2021年春号』の一部を再編集したものです。

麻布、灘、渋渋・渋幕などの校長が語る「これが有望人材」

これからの時代を生き抜いていくには、どんな力が必要なのか。そのために、家庭でやるべきことは何か。トップクラス校の校長に聞きました。十人十色の答えの中から、きっと各家庭に響く答えが見つかるのではないでしょうか。

各校長に聞いたのは、子育て世代の多くの親が悩む、下記の2つの質問。

Q1:これからの社会で必要になる力は何でしょうか?
Q2:その力を身につけさせるために、家庭教育でやってほしいことを教えてください。

●麻布中学校・高等学校校長 平秀明さん

情報をうのみにせず、自らの頭で考えよ

ニュートンはペストの流行によって大学が閉鎖し、郊外で思索の日々を過ごす中で、万有引力の法則を発見したといわれています。

麻布中学校・高等学校校長 平秀明先生(撮影=黒坂明美)
麻布中学校・高等学校校長 平秀明先生(撮影=黒坂明美)

2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大による自宅待機を生徒に通知した際にこのエピソードを添え、今だからこそ日頃読めなかった本を読んだり、関心のあることを追究したりしてほしいと伝えました。

コロナ後の時代には、与えられた情報をうのみにせず、自分の頭で考える力が一層重要になるでしょう。

今回の新型コロナウイルス感染症の流行では、政府の方針やメディアの主張はコロコロ変わりました。自分で考えずに指示に従うという癖がついてしまうと、社会の動きに流されて、周囲の人間の決定についていくだけの人生になってしまいます。

私もこの1年間は生徒たちに「自らの頭で考えよ」という話をよくしました。

2020年秋には「コロナ感染者が出ることを怖がっている人も多いと思うが、わが校で感染者が出るのは想定内だ。もし感染者が出ても差別しないように」と生徒に話しました。

新型コロナは怖い病気ですが、一定の確率で校内に感染者が出ることは避けられません。ただ、ニュースに踊らされていたずらに怖がるのではなく、起きそうな状況を想定して心の準備をしておけば、自分の行動を変えることができます。

ご家庭でもニュースを自分の身に引きつけて、子供が深く考える機会をつくってほしいと思います。

たとえば、そもそもウイルスとはどのような存在なのか、感染症の専門家と知事や政府の話す内容に隔たりはないか、友だちや自分が感染したらどう振る舞うべきか、等々について話し合ってみてください。

世間や周りの人はこうだからと思考停止せずに、立ち止まって考える癖をつけることが、自分で考えて行動を選び取る力を育てることにつながっていくはずです。

【学校が注目している卒業生】

鈴木優人さん 指揮者・作曲家・チェンバリスト
青嶋未来さん 将棋棋士

東京藝術大学に進学し、音楽家として活躍している鈴木さんは、麻布OBオーケストラの演奏会でも指揮者を務めてくれています。青嶋さんは在学中は学校と奨励会の両立に努め、高校卒業後、10代で四段に昇段し、プロとして活躍しています。2人をはじめ、多くの卒業生が自分の道を見つけ、そこで活躍する姿を目にするのは非常にうれしいですね。

▼『プレジデントFamily 2021春号』好評発売中!
『プレジデントFamily2021年4月号春号』

現在発売中の『プレジデントFamily春号』では、特集「子育て新常識ベスト100」として、「御三家、新機軸校、海外エリート校の校長が考えていること、名門校校長インタビュー『今、家庭でやっておくべきこと』」「新時代に輝く子になる! 10賢人の知恵(高濱正伸・齋藤孝・山極壽一ほか)」「第1回共通テストでわかった これから必要な力」なども掲載している。ぜひ、手にとってご覧下さい。