●広尾学園中学校・高等学校校長 南風原朝和(はえばら ともかず)さん

話をよく聞き、よく話し、中身のある会話を!

今は先が見えない時代といわれています。しかし、振り返ってみれば、いつの時代も先のことは見えませんでした。たとえば1年前に現在のコロナ禍を誰が予想できていたでしょうか?

広尾学園中学校・高等学校校長 南風原朝和先生
広尾学園中学校・高等学校校長 南風原朝和先生(撮影=黒坂明美)

未来予想が不可能な以上、これからの時代に合わせるのではなく、時代がどう変わろうとも求められる力を身につけることが大切です。

そしてそれは決して特殊な力ではありません。従来の教育現場でいわれてきたような豊富な知識や経験、深い理解や向学心など、基本的な力だと思います。社会が混乱している今だからこそ、子供たちには焦らず目の前の学びを一つ一つ積み上げていってほしいと願っています。

ご家庭では、まず子供が安心して過ごせるよう「いつも味方だよ」と伝えてやってほしいですね。

安心できる家庭があることで、子供は物事に没頭したり、興味のあることを調べてみたり、新しい遊びを考えたりといった“冒険”ができます。もし失敗しても戻る場所があるからこそ、前に進んでいけるのです。受験もできるだけポジティブな“冒険”になるように心がけてください。

『プレデントFamily2021年春号』
『プレデントFamily2021年春号』

点数が低いと居心地が悪くなるような環境では、子供がその後の挑戦に臆病になってしまいます。「頑張った結果がどうなるか楽しみ」くらいに捉えてほしいですね。

また、子供が興味のある事柄については、多少背伸びをさせて“本物”に触れさせることがおすすめです。わが校ではキャリア教育として、中1から大学の先生の講義を受けたり、社会の第一線で活躍される方の話を聞いたりする機会があります。早い段階から、学問や仕事の魅力について触れることは大きな刺激になります。

ご家庭でも子供が興味を持ったことに対して、博物館や美術館、大学、スポーツ観戦などに足を運ぶ機会をつくってやってください。

【学校が注目している卒業生】

須田隆太朗 東京大学 工学部3年生

本校在学中から統計学について研究したり、生徒会の全国大会の運営に関わったりするなど積極的に活動していました。東京大学入学後も、社会を変えるアイデアの実現とイノベーターの育成を目指すプログラム「Red Bull Basement」の2020年度日本代表になるなど活躍しており、今後が楽しみな卒業生です。

●渋谷教育学園幕張中学校・高等学校、同渋谷中学校・高等学校 校長 田村哲夫さん

A1:異文化アジリティー(異なる文化的背景を持つ人々とうまく協働する基本的姿勢)。

開校以来、本校では「国際人としての資質を養う」ことを教育目標の一つに掲げ、多様な海外留学プログラムや帰国生・留学生の受け入れ、海外との文化交流、海外の大学への進学サポートなどを実践してきました。コロナ禍でもその活動はとどまらず、むしろリモート等を通じ、より活発になってきた感さえあります。多様化する世界の中で異なることを否定するのではなく、なんか違っているぞ、おもしろいな、と思う心を大切に育てていきたいです。

A2:自分の考えを文章としてまとめたり、詩を鑑賞したりすること。

大正時代、鈴木三重吉や北原白秋が中心になって進められた「赤い鳥運動」が参考になると思います。運動ではつづり方を学び、詩を鑑賞することで、自分の考えをまとめ、アンテナを高くして敏感に感じる姿勢が促されました。これらは、これからの未来を創っていく若者が異文化アジリティーを身につけていくうえで、その素養となる特に大切な資質であると考えまする。

【学校が注目している卒業生】

(渋幕)平野拓也 米マイクロソフト社副社長

[推薦の理由]異文化アジリティーを体現するような生徒だった。

[在学中の様子]学園祭でも新たなイベントを実行するなど、たいへん積極的な活動が印象的であった。「異文化アジリティー」は平野君の口癖。

(渋渋)内山慧人 米フェイスブックビジネスパートナー

[推薦の理由]同上(異文化アジリティーを体現するような生徒だった)

[在学中の様子]生徒会役員を務め、人とのつながりを大切にした活動で、未完成だった生徒会のかたちを整えた。卒業後は、東日本大震災後に安否確認アプリを自作し、早々に公開した。「大事なのは新しい挑戦があるかどうか。場所は関係ない」という言葉はよく引用されている。