子供たちに「定期テスト直前の一夜漬け」をやめさせるにはどうすればいいか。千代田区立麹町中学校の校長を務めた工藤勇一さんは「麹町中では定期テストを廃止した。定期テストをなくすと勉強しなくなると思う人が多いが、それは大人の思い込みにすぎない」という――。

※本稿は、工藤勇一・青砥瑞人『最新の脳科学でわかった! 自律する子の育て方』(SB新書)の一部を再編集したものです。

勉強
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

「自律」はメタ認知能力のことである

私が麹町中学で一貫して目指したのは、子どもたちの「自律」であり、自律を脳科学の文脈に置き換えたときの中心概念として据えたのが「メタ認知能力」です。神経科学的な定義は青砥さんにしていただきましたが、私が子どもたちにメタ認知を説明するときに使っている定義は、さまざまなものがあります。

・自分を知る力
・自分自身をコントロールする力
・自分を成長させていく力
・ネガティブをポジティブに変える力

青砥さんも指摘されたようにメタ認知能力は簡単に身につくものではありません。メタ認知能力を高めるためのセミナーに出ている大人は私のまわりにもたくさんいます。ビジネスコーチングを受けている人もたくさんいます。しかし、そういう人たちのメタ認知能力が高まっているかというと、必ずしもそうとは限りません。

うまくいかない理由として、理屈を頭で理解する段階で満足して終わっている人もいるでしょうし、自分の具体に落とし込むことができてもそれを続けられなくて終わっている人も多いと思います。

ですから、学校で子どもたちにメタ認知能力を学んでもらうためには、子どもたち、教員、保護者全員が「自分を知り、自分を変える」重要性をしっかり理解した上で、「3つの言葉がけ」に代表されるように心理的安全性がある程度保たれたなかでトレーニングが続けられる仕組みや制度を大人がしっかりつくることが重要だと考えています。

「反省しない」「自分を責めない」が出発点

メタ認知能力を高めていく際に気をつけてほしいのは「反省しないこと」「自分を責めないこと」です。そのためには親や指導者は「子どもを責めない」「否定しない」を徹底しないといけません。

もちろん自分に関する客観的な情報を持っておくことはメタ認知において必須です。自分に意識を向ける訓練も必要でしょう。ただ、青砥さんも書かれていたように、本人が望まなくても子どもは学校や家庭、塾、クラスメイトなどから外部評価を洪水のように浴びています。

メタ認知をする上で大切なのは、自分に関する情報や評価を「自己否定の材料」に使うのではなく、「自分の成長の糧」に変えていく意識の改革です。そこがすべての出発点です。

その意識を変えるためには、多くの人が常識だと思っている思考の大前提となる部分をまるっきり上書きしないといけません。

「理想的な人間を目指せ」→「人間は所詮デコボコだよ」
「失敗は許さない」→「人間は誰でも失敗するし、たとえ失敗しても大丈夫」
「いい学校に行け」→「学校なんて練習場にすぎないよ」
「周囲と合わせろ」→「人はみんな違うんだよ」
「気合で乗り切れ」→「頑張れないのが普通だよ」