自ら伸びていく子を育てるには、どうすればいいのか。脳科学者の青砥瑞人さんは「メタ認知能力のスキルを身につけさせるといい。『自分なりの物差し』があれば、心も強くなる」という――。

※本稿は、工藤勇一・青砥瑞人『最新の脳科学でわかった! 自律する子の育て方』(SB新書)の一部を再編集したものです。

古い建物の階段でスマートフォンを見る女の子
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メタ認知能力が高い人ほど、目標達成能力が高い

教育の本質的な目標は自らの力で自分を成長させられる術と、幸せな状態をつくり出せる術を学んでもらうことです。その両方の実現に不可欠な「状態」が心理的安全性であり、不可欠な「スキル」がメタ認知能力です。メタ認知(metacognition)という概念は、認知心理学の領域で生まれたものです。

メタとは「高次の」という意味ですから直訳すれば「(自分の)認知自体の認知」。簡単にいえば「自分を知ること」です。メタ認知能力が高い人ほど自分の特性や癖を正確に把握できるため、目標達成能力や課題解決能力が高いと言われています。

メタ認知の明確な定義は研究者によってマチマチではありますが、私なりに定義するメタ認知とは「自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能」のことです。

自分を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ

ポイントは2つあります。

ひとつはやはり自己の捉え方です。自分の内面、つまり自分の思考パターンや行動パターンをはじめとする自分の脳の特性や、自己変容の軌跡などに意識を向け、それらを俯瞰的に捉えることがメタ認知において絶対不可欠です。世間でもメタ認知についてさまざまな解釈が存在しますが、共通しているのは自分自身を対象化し、もうひとりの自分がそれを見ているような感覚で自分を捉えるということです。

しかし、自分を俯瞰視するだけではメタ認知の「スキル」としては物足りません。

それが2つ目のポイント。「自己について学ぶ」です。自己と向き合い、そこで得た情報を脳の中に記憶痕跡としてしっかりと書き込んでいくことが、メタ認知の本質的な意義であり役割ではないかと思うのです。メタ認知の定義に自己学習を含まないケースもありますが、教育現場にメタ認知スキルを導入していくのであれば、私は含むべきだと思います。