「その日に起きた嬉しかったこと」を子どもに尋ねる

子どものメタ認知能力と自己肯定感を高め、同時にウェルビーイングを実現する手軽な手段として私がおすすめするのが、「その日に起きた嬉しかったこと」を毎日子どもに尋ねることです。非常にシンプルですが、効果は抜群です。

家庭でやるならご飯を食べるときに家族で報告し合うのでもいいでしょう。それなら親御さんもメタ認知の訓練ができますし、脳内に蓄積しがちなネガティブな情報を少しずつ入れ替えていくいい機会にもなります。毎日かっちり時間を決めてやる必要はありません。何気ない会話のなかに織り込んでいくことができれば十分です。

お箸で焼き魚を食べる子ども
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

ポイントは「毎日」やること

ポイントはできるだけ毎日やることです。内省の回路を太くするためには場数が必要であるのですが、そもそも人の記憶は本人が思っている以上に曖昧です。時間軸が長くなると大半の情報は忘却され、印象深い記憶(専門用語で「ピークエンドの情報」)ばかりが残ってしまう特性があります。

人は強い感情と紐づく記憶ほど海馬に定着しやすいため、どうしてもピークエンドの情報は「怒られた」「失敗した」「恥ずかしい思いをした」といったネガティブな体験が多くなってしまう傾向があり、日常にあった小さな幸せを忘れてしまいがちです。だから振り返りは記憶がフレッシュなうちにしたほうがいいのです。

そうした細かい情報にちゃんと気づき、そのときの感情をセットにして思い出し、共有する行為を通して、自分に関するポジティブな情報が少しずつ書き込まれていきます。しかも人に話しているうちに自分のなかでの興味関心の矛先や、大事にしている価値観、幸せを感じやすいポイントなどが少しずつメタ認知できるようになります。