理解度のギャップを埋めるにはステップを刻む

「風が吹けば桶屋が儲かる」という俗諺ぞくげんを聞いたことがありますか? これは、2つの物事の間の原因と結果を探っていくときによく喩えで使われるものです。

ただ、このフレーズを一度も聞いたことがないという人は、「風が吹いたら、なんで桶屋が儲かるんだ?」――そう思ってしまいますよね。

つまり、「風が吹くこと」と「桶屋が儲かること」の“つながり”がまったくみえないのです。

これを次のように説明したらどうでしょうか。

[説明例]
「風が吹けば桶屋が儲かる」というのは、次の7つのステップで考えると、このつながりがみえてきます。
Step1:風が吹くと土ぼこりが立ちます
Step2:土ぼこりが目に入って、視力の悪くなる人が増えます
Step3:視力の悪くなった人は三味線を買います(当時、視力の悪い人が就ける職業に由来)
Step4:三味線の素材となるネコの皮が足りなくなり、ネコの捕獲が行われます
Step5:ネコが減れば、ネズミが増えます
Step6:ネズミが増えれば、桶がかじられます
Step7:桶がこわれることで、桶の需要が増え、桶屋が儲かります

このように、「風が吹くこと」と「桶屋が儲かること」の間にいくつかのステップを刻んであげることで、その「つながり」がみえてくるのです。

この「つながり」をつくるテクニックが、“理解の階段”をつくる説明スキルとなります。

“理解の階段”を作るためには「初心にかえる」

なお、“理解の階段”をつくる上で気をつけなければならないのが、その段差です。図表3にあるように、あなたとその相手の間に知識や理解度に大きなギャップがあればあるほど、できるだけ1段ごとの段差を小さくします。

この段差を小さくするコツとして、話し手である自分自身が説明内容の知識やスキルを習得したときのことを思い出します。当時の自分がどのように階段を上がっていったのか、どこでつまずいてしまったのか、自分の記憶をたどるのです。ビデオを巻き戻して、初めから再生する感覚です。

まさに「初心にかえる」というやつです。逆に、この段差が大きく、段数が少ないとき、相手はなかなか理解してくれません。

『神わかり!頭のいい説明力』
神わかり!頭のいい説明力』(PHP研究所)より