同質性の高い人たちとばかり会話する弊害

また、学者の方の話がわかりにくくなる原因の一つに、「普段コミュニケーションをとる人が専門性の高い人に偏っている」というがあります。

私自身も現在大学院で研究をしているのでよくわかるのですが、研究をメインとしている学者の方は、専門家どうしでの会話が多く、専門書や研究論文に触れている時間も長いので、どうしても普段使いの用語や考え方の専門性が高度になってしまうのです。結果として、テレビや講演会で一般の人に向けて話をしようとすると、難しくて伝わらないということが起こってしまうのです。

これは学者の方に限らず、専門性が高く、普段のコミュニケーションが外界から閉ざされやすい業種の方にも当てはまります。

あえて専門外の人とのコミュニケーションを増やす

これをクリアする手段として有効なのが、「自分の専門分野を、あえて専門外の人に話してみる機会をもつ」ということです。家族でもいいですし、異業種流会で知り合った人でもかまいません。自身の専門分野を、その道に詳しくない素人の方と積極的にコミュニケーションをとるのです。

『神わかり! 頭のいい説明力』(PHP研究所)
『神わかり! 頭のいい説明力』(PHP研究所)

そうすることで、自分の普段使っている用語や、当たり前に感じている考え方は、「いかに専門性が高いものなのか」ということに気づくことができます。言い換えると、自分はいつも段差の大きい階段を駆け足で上がることができていて、専門外の人には、それがいかに難しいことなのかを実感することができるのです。

このようなコミュニケーションの機会を増やすことで、専門外の人の視点を持てるようになるので、“理解の階段”の段差を小さく刻もうという意識が強くなるのです。

「わかってもらう」とは、聞き手のためにこの“理解の階段”を素早く精巧に作る作業ともいえます。聞き手ができるだけ理解しやすい、つまり“理解の階段”をいかに上りやすい段差に設計するか。そこが説明力の核心ともいえるのです。

ぜひ聞き手のために、この“理解の階段”を意識的に作ってみてください。

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