コロナ禍で多くの大学が授業をオンラインに切り替えた。授業を聞くには、時間と場所を選ばないオンラインのほうが便利だという声も多い。東京大学大学院の吉見俊哉教授は、「そうすると、かなりの大学の先生は要らなくなる。絶対に面白い授業だけを配信すればいいからだ。ただ、そうした大教室を前提とした大学の設計が、そもそも間違っている」という。ジャーナリストの堀和世さんが聞いた――。

※本稿は、堀和世『オンライン授業で大学が変わる』(大空出版)の一部を再編集したものです。

大学の大教室で講義をする教授やアシスタントたち
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです

学生は「オンライン化するなら大教室授業」と言うが…

——少人数授業であれば、オンラインが対面よりも効果的でありえるというのは、意外な気もします。学生アンケートなどを見ると、オンライン授業がなじむのは大教室形式であり、ゼミ形式などは対面授業が望ましいという声が一般的です。

学生から見れば、その方が楽なんだと思います。200~300人の授業で同時双方向型は考えられない。大教室のオンライン授業はオンデマンド配信型で、これは学生にとっては楽です。いつでもアクセスできる。バイトの合間にアクセスして、必要な情報をチェックすればいい。ただ、それでいいのかということです。

大教室の授業は実空間であろうが、オンラインであろうが大差ないんですね。実際に対面で授業をしても、ほとんどの学生は出席を取られて座っているだけで、こそっとスマホを見てたり。真剣に聞いている学生はごく一部ですから。

少人数のオンライン授業は要求水準が高い

そう考えると、消費者としての学生のニーズにより合っているのは、大教室のオンデマンド配信型の授業です。実空間の授業は学生を来させて、一定時間そこに座らせる。その義務を外すのがオンデマンド配信です。授業を購買する、ショッピングするという意味では、大教室・オンデマンド配信型の方が、お手頃の商品であることは間違いない。学生たちが大教室の授業はオンデマンドの方がいいと言うのは当然だと思います。

一方、少人数・同時双方向型の授業では、学生は授業に集中しなくてはならないので疲れます。アクティブにやろうとする先生はどんどん学生を当てて、発言させていく。学生はボーっとしてられなくて、負担が大きいと思います。なおかつ、オンラインの方が学生に対するリクワイアメント(要求される基準)は大きくなるんです。