偏差値の高い名門校や進学校に入れば、幸せになれるのか。学校内の学力順位と、学力の伸びの関係性を調べた慶應義塾大学環境情報学部4年の中尾亮太さんは「分析の結果、学校内の相対順位が下がれば、精神面や学力に悪影響が出た。無理に背伸びをして周囲の学力が高い、名門校や進学校に進学しなければならない絶対的な理由はない」という――。
相対的な順位が人生を左右する
皆さん、小学校時代を思い出してください。足が速い男の子がモテる。そんな現象を目の当たりにしたことがある方は多いのではないでしょうか。筆者は、クラスで一番足が速かったクラスメートを今でも鮮明に記憶しています。
しかし、そんな彼もオリンピック選手になったわけではありません。この世の中、上には上がいます。そして、彼がクラスで一番足が速かったのは、彼自身が「条件」に恵まれていたからにすぎないのです。なぜなら周囲の走力によって順位が決まっていたからです。
足の速さは彼の実力ですが、偶然にも彼より足の速い人が周囲にいなかっただけ。そのおかげで、クラスメートから一目置かれ、異性から人気を集めることができ、幸せな時間を過ごすことができたわけです。
もしクラスメートがオリンピック級の生徒ばかりであったら、彼が「クラスで一番足が遅い人」になっていたことでしょう。彼はクラスメートから羨望のまなざしで見られることは期待できません。さらに彼は走力にコンプレックスを抱える恐れがあります。
言うまでもなく競争や勝負には本人の実力は欠かせません。しかし、本人が置かれた「条件」(所属するコミュニティーにおける能力水準)も非常に重要な要素になるのです。そして、走力だけではなく、就活・大学受験・恋愛など、人生のあらゆる場面で私たちの「幸福感」に関係するのです。
このように、同じ能力水準である人であっても、周囲の条件などの違いで人生が変わってしまう。そんな研究は海外では数多く行われております。そこで今回は「学力」という観点に絞って過去に行われた先行研究を簡単にご紹介したいと思います。