同じ学力でも順位が高いと大学進学率が高くなる

Elsner et al.(2017)の研究は大変興味深いです。彼らは、同じ学力でありながら周囲の学力レベルが異なり、学校内順位が異なる生徒のその後を比較しました。結果は、小学校時の順位が高かった生徒は、大学進学率が高いことが判明したのです。

他にも、Murphy, et al.(2018)の研究によると、小学校時の順位が高いと中学時での学力が高いと報告しております。

このように、同じ学力であっても、偶然にも順位が高かった人は大学進学率や学力でポジティブな影響を受けていました。逆に、周囲が自分より勉強ができる人が偶然にも多く、順位が低かった人は大学進学率や学力にネガティブな影響を受けていたのです。なおElsnerやMurphyが行った研究を相対順位(relative rank)研究と以後と表現します。

ElsnerやMurphyが行った相対順位(relative rank)研究

先ほど紹介した相対順位(relative rank)研究は海外で行われたものです。日本では学校のデジタル化の遅れからデータ化が難しく、またプライバシー保護が強いため、同様の研究はあまり例がありません。

そこで、私は先述の研究者たちの手法を踏襲し、ある都道府県の協力を得て、小学4年~中学3年を対象に5年分のパネルデータ(N=100万程)を分析しました。このデータには、標準化された認知テスト(国語・数学等)から個人の性格や特性、家庭の文化資本を表す居住地・自宅の本の数など豊富な情報が含まれた貴重なデータになります。

校庭をかけていく小学生たち
写真=iStock.com/paylessimages
※写真はイメージです

このデータを用いて小学4年時の学力順位が、中学3年時の学業成績にどのような影響を与えたかを分析しました。同じ学力でありながら周囲の学力水準と学校内順位が異なる生徒のその後の学力を比較しました。

「相対順位」が生徒にプラスの効果を与える

結果は、先行研究と同じく学校内順位と学力には強い関係性が見られ、順位が高い人ほど学力が高くなる傾向にありました。数値的には、相対順位(relative rank)が1標準偏差増加すると 100点満点の換算でテストスコアを8~9点の上昇させるインパクトを持ちます。

では、どのようなメカニズムで学校内の順位が、生徒自身の学力に影響を与えたのでしょうか? この問に答えるために、先行研究の知見を借りたいと思います。

例えば、相対順位(relative rank)が高い生徒ほど大学進学・高校卒業等にポジティブな影響があると指摘したElsner,は、その理由を順位が高い人ほど周囲からの教育投資に恵まれた環境下にいる傾向があるからと報告しています。

他には、順位が低い生徒ほどdrug/smoke/sex(不良行為)に走る傾向との研究報告があります。この背景には、順位が低い生徒ほど不良行為を日常的に行う生徒と過ごす時間が多くなる点を挙げています。一方、順位が高い場合はそのような生徒とは接点が少ない傾向にあるそうです。