一目で「アラジン」とわかるスタイル

そしてアラジン・トースターのデザインについては、丸みを帯びたレトロな外観とし、トースターとしては珍しい、緑のカラーも用意するなど、アラジン・ブランドの歴史のなかで継承されてきたスタイルを守るようにした。この一目でアラジンとわかるスタイルは、アラジン・トースターが他の高級トースターとは一線を画する存在であることを、見る人に直感的に伝えるとともに、本物感を生み出すことになる。

アラジン・トースターの発売当初は、販路はオンライン直販と百貨店に絞った。百貨店では、アラジン・トースターの数カ月前に発売されていたバルミューダの高級トースターと並べて陳列され、店頭で顧客の目を引く相乗効果が生まれた。なお、その後小型で安価な機種を発売して以降は、家電量販店にも販路を広げている。当初百貨店に販路を絞ったのは、価格を保って販売するには百貨店が適しているとの判断による。

「本物としての価値」をどう顧客に伝えるか

先述のようにアラジン・トースターの営業企画の担当者は、量販店のバイヤーの経験があった。そのためにバイヤーの心理がわかっており、アラジン・トースターの知名度を高めることの重要性を理解できた。バイヤーは、話題になっている製品を取り扱っていないと、顧客だけではなく、会社の上層部などからも指摘を受けることになる。これはバイヤーとしては避けたい事態である。

このように顧客により近い小売りの現場で、新しい市場が生まれていく仕組みを経験していたことが、アラジン・トースターの市場づくりに活用されている。高級家電の市場をつくるのであれば、知名度に加えて、さらに高い価格に見合う付加価値がどこにあるのか、その理由をブランドの歴史やストーリーを踏まえて伝えることで、本物感を備えることも必要である。そして、こうした情報の出し方に加えて、販路の拡大の順序なども工夫して、製品の値崩れを防ぐことも欠かせない。