「国家の覇権」のために利用されている

近年、中国で「中国の社会秩序は完全に西側とは異なるものだ」という主張をよく耳にするようになった。それが最も顕著に現れたのがコロナ禍で、中国のインテリたちは異口同音に「個人は自分の権利と補償ばかりを主張し、自己の義務や犠牲には目を向けなかった」と、西側の国家制度や社会文化の違いに言及した。

姫田小夏『ポストコロナと中国の世界観‐覇道を行く中国に揺れる世界と日本』(集広舎)
姫田小夏『ポストコロナと中国の世界観 覇道を行く中国に揺れる世界と日本』(集広舎)

その反対に、「人々が団結し社会に対して一定の譲歩を行い、政府に個人の権利の一部を与え、短期のうちにウイルス封じ込めに成功したのが中国だ」という。コロナ対策で、プライバシーや個人の権益を犠牲にした中国の国民は、「社会全体の安心安全」を得た。

情報を公開しないことによって守られる個人の権益がある一方で、情報を公開することで社会を守ることもできる。コロナ禍の中国では、「個人の権利の一部」を譲ることで「社会における安全性の確保」を可能にした。だが、このまま突っ走るのは危険だ。ややもすると「技術の進歩」や「国家の覇権」のために国民が利用されることにもなりかねない。本末転倒な社会になってはならないと筆者は強く感じている。

【関連記事】
元海自特殊部隊員が語る「中国が尖閣諸島に手を出せない理由」
「罰金はわずか数百円」それでも中国人が信号を守るようになった怖い理由
「今世紀最大のウソだ」なぜ中国はアメリカの指摘に異様に反発するのか
中国人の尖閣諸島上陸に「遺憾」しか言えない国のままでいいのか
アメリカのトップMBA校で日本人が減り、中国人が増えているカネ以外の理由