変異株の主流は「N501Y」と呼ばれるイギリス由来のウイルス
新型コロナウイルスの感染が急拡大している。すでに多くの専門家が「第4波に入った」とみなしている。とくに大阪府では1日あたりの新規感染者数が連日、1000人を超え、重症患者の病床使用率が9割以上となった。その結果、一般の診療に悪影響が出ている。
ひとつの原因はウイルスの変異だ。主流の変異ウイルスは「N501Y」と呼ばれる。イギリス由来の変異株で、ウイルス表面のスパイク(突起)に存在する501番目のアミノ酸(タンパク質を構成する物質)が従来タイプのN(アスパラギン)からY(チロシン)に置き換わっていることからこの呼び名が付いた。
感染力が強く、その分、発症から重症化までのスピードが速いといわれる。これまでのウイルスとは異なり、若年層でも重症化する可能性も指摘される。すでに全国各地に広がり、5月には既存のウイルス株が追い出されて消え、このN501Yに入れ替わるという。
私たちは変異する新型コロナにどう対応していけばいいのだろうか。
4種類のコロナウイルスは人間の世界に定着し、人間と共存している
人に感染するコロナウイルスには7種類ある。新型コロナやSARS(サーズ)、MERS(マーズ)の3種類のほか、通常の「風邪」の病原体として私たちの身近にも4種類ある。
冬場、私たちはこの4種類のコロナウイルスに感染して咳をしたり、発熱したりする。ときには肺炎を引き起こすなど重症化することもあがるが、大半は私たち自身の免疫(抵抗力)でカバーでき、自然と治る。4種類のコロナウイルスは人間の世界に定着し、人間と共存している。
一方、重症急性呼吸器症候群のSARSは2002年から03年にかけ、東南アジアを中心に流行した。感染したときの症状は、肺炎を引き起こすなど比較的はっきりしていて患者・感染者を特定しやすく、防疫がしやすかった。このため8096人の感染者を出し、うち774人が死亡したものの(致死率9.6%)、駆逐には成功し、SARSは人間界からこつぜんとその姿を消した。
中東呼吸器症候群のMERSは、2012年からサウジアラビアやアラブ首長国連邦など一部の地域で感染を繰り返している。ヒトコブラクダが宿主とみられ、致死率は35%とかなり高く、注意が必要だ。