初めに借金を労働者に背負わせて派遣する

大内さんの人夫出しの仕組みは分かった。

初めに借金を労働者に背負わせた上で、人を派遣しているのだ。上村さんとの大きな違いは、派遣された労働者を守るのではなく、いかにして労働者から搾取するかを考えている点だ。

花田庚彦『西成で生きる』(彩図社)
花田庚彦『西成で生きる』(彩図社)

もちろん上村さんも人を派遣して金銭を抜いている人夫出しだ。しかし仕事に対する情熱や誠意を考えれば、それは当然の対価であろう。

毎日抜いているか、まとめて抜いているかの違いもあるが、労働者の気分では毎日気持ち良く安全な現場に派遣されたほうがいいだろう。

上村さんが初めに語った“あくどい人夫出し”というのは大内さんのような形態を取っている人であろう。

そのような人夫出しはあいりんセンターの周囲には今も立っている。

また、大内さんのような人夫出しが普通の姿と言えるのが西成の姿である。

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