寮に入れる人間だけを探して毎月50万円もうけている計算に

——大内さんは労働者を売っているという解釈でいいのですか?

「売っているという言い方はおかしいやないけ。例えば現場の道具を持ってない人間おるやろ。西成に初めて仕事を探しに来たような人間はみんなそうや。それを店で作業着やらいろいろ揃えなきゃあかん。現場でも買うこと出来るけど、それはホンマに高いんや。それをワシが善意で買ってやっとる。それは借金や。当たり前やろ」

——いや、それは仕事で使う道具のことで、私が聞いたのは労働者を売っているのではないかということです。

「それは売ってない、そんなの人身売買やんけ」

大内さんは否定したが、周囲から聞いた話では大内さんは労働者を売って対価を得ていた。

それはひとり1日2、3000円で1カ月という契約での金額だが、まとまれば大きい金額であろう。安く見積もって2000円として、1カ月25日計算でも5万円という金額になる。大内さんが10人派遣しているのが事実なら、50万円という金額が毎月入ってくる計算になるのだ。

それを毎日あいりんセンターに来て、労働者を見つけるのではなく、寮に入れる人間だけを探して遠い現場に派遣していたのだ。

当然仕事を辞めたい人間はいるであろう。

人身売買や強制労働は当然法律で禁止されており、これを破ると重い処罰があるが、大内さんはそれを強い口調で断固否定した。

原発事故の作業にも労働者を手配した

——今までどんな現場に労働者を派遣しましたか?

「原発も孫請けで人を仰山送ったな、あれは日当がいいから人が集まるんや。それこそ募集したらすぐに人が集まりよる」

どんな現場でも派遣するという周囲の評判のひとつに原発の仕事があるのであろうか。

日当が高いという評判だった東日本大震災の原発事故の作業員。果たして大内さんはいくらで派遣していたのであろうか。

——原発は日当がいいと聞いたことがありますが、いくらくらいだったのですか?

「日当は1万2000円やね、寮費も掛かるやろ。原発やから寮費はワシが出しとったな。遠方だから交通費なんかも掛かる」

あの当時の原発は、誰しもができれば行きたくないと思っていたために、高い賃金を払って雇っていた。きっと元請けはその倍以上の高い値段で請け負ったに違いない。大内さんは元請けから遠い立場なのは想像できるが、それでも大きく抜いたのであろう。ワシが寮費を払った、と大内さんは言い放ったが、当然それを払っても痛くも痒くもなかったからであろう。