ポピュリズムはナショナリズムと親和性が高い

【佐藤】しかし、結果的に、本質的な問題はスルーされてしまう。ポピュリズムの弊害は、そういうところに現れます。場合によっては、国の進むべき方向を誤らせる危険性もはらむわけです。

池上彰・佐藤優『ニッポン未完の民主主義』(中公新書ラクレ)
池上彰・佐藤優『ニッポン未完の民主主義』(中公新書ラクレ)

【池上】例えば、北朝鮮は危険な存在だ。いつミサイルが飛んでくるか分からないではないか。だったら、国を守るために、飛んでくる前に叩くべきだ。皆さん、そう思うでしょう――。そういうふうに、ポピュリズムはナショナリズムと親和性が高いことにも、注意が必要なのです。

その意味でも、さきほどの「民主主義とポピュリズムの違い」についての佐藤さんの定義は、非常に重要だと感じます。単に「民主主義というのは、人々の思いを大切にするのだ。それを集約して実行するのだ」というような茫漠ぼうばくとした理解にとどまっていると、足をすくわれてしまうかもしれない。少数派の意見を徹底的に聞く、という文字通りの民主主義の精神を置き忘れたら、政治はいくらでもポピュリズム的なものになり得るわけですから。

民主的な手続きで登場することを忘れてはいけない

【佐藤】忘れてならないのは、ポピュリズム政治家も民主的な手続きを経て登場するということです。

【池上】そこが難しいところで、ポピュリストを批判しようと思っても、「何を言っているんだ。私は正当な選挙で選ばれ、これだけの支持を集めているじゃないか」と開き直られたら、反論するのは骨が折れるでしょう。逆説的ないい方をすれば、民主主義は実はとても危険な制度とも言えるわけです。

【佐藤】うわべの民主主義に安住するのではなく、常にそういう認識、あえて言えば警戒心を持つことが必要です。

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