アルツハイマー型認知症の義父母を自宅で介護することになった30代の嫁の前に現れたのは、義姉。介護には一切、手を貸さないにもかかわらず、親の実家売却額の分け前や遺産分割を求める。ワガママ言い放題の義姉に対して家族会議で嫁が発した痛快な啖呵とは――。
互いに会話する人々
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義父母の「遺産」目当てに義姉がしゃしゃり出てきた

前編から続く)

2018年12月。中部地方に住み、介護認定調査員の仕事をする能登千秋さん(仮名・30代後半)夫婦は、結婚して他県で暮らす義姉を交えて家族会議の場を設けた。当時、義姉は40代。大学生の息子と高校生の娘がいた。義姉は自分の子どもたちに入学や卒業など何かお祝い事があってもなくても、頻繁に義母に金の無心をしてきた。

義両親は認知症になる前、まだ元気な頃は、義姉家族とよく旅行や外食に出かけていたが、費用だけでなく土産代まで、すべて支払っていた。

義姉は、能登さん夫婦がアルツハイマー型認知症で生活に不安がある義父母の実家を売却して、自宅に招いて同居することになったと知り、「千秋さんはそれでいいの?」と聞いてきた。能登さんが「嫌だって言ったらお義姉さんがみてくれるんですか?」と訊ねると、「いや、ウチは子どもたちが今就活や受験で……」と慌てて、自分が両親をみる覚悟はさらさらない。

義姉は10年ほど前、母親や今は亡き祖母に「実家に帰ってくるなら事前に連絡して、手土産ぐらい用意する!」と怒られてから、実家に寄り付かなくなっていた。

夫が両親に700万円の借金があることについて話すと、「家を処分して返せばいいじゃない」と義姉は即答。

親の介護放棄「姉ちゃんは人として間違ってる」

続いて夫が義父母に、「父さんたちは相続について何か考えはある?」と訊ねると、義父は「お前に一任する」と言った。

「ありがとうお父さん。俺の考えは、両親は俺たちが引き取って同居する。借金は家を売却して返済。残金は2人の老後の資金として、死亡後の口座凍結に備えて、父さんと母さんの口座に半分ずつ。借金さえ完済すればギリギリ年金で生活はできるから、貯金は施設に入るときに使う。だから姉ちゃんには、相続を放棄してほしい」

夫がそう言うと、「そんな! ウチだっていろいろ大変なのに!」と義姉が声を上げ、義母も「たった2人の姉弟なんだから、仲良く分ければ良いじゃない!」と続いた。

「お母さん、介護も家の売却も借金の返済も俺たちに丸投げ。なのに何もしない姉ちゃんに『財産を半分あげて』は変だろう? 俺らは別にお金にこだわってるわけじゃないけど、姉ちゃんは人として間違ってる。千秋も言いたいことあったら言っていいよ」

突然話を振られた能登さんは、「ただ娘だっていうだけで、親の介護もせずに財産がもらえるって、幸せだなって思います」と控えめに発言した。