新教科書は生徒が課題を見つけ、その解決策を探る道標

来年4月から主に高校1年生が使う教科書の検定結果が3月30日、公表された。文部科学省によると、新学習指導要領に対応する初めての高校の教科書で、生徒が自分で課題を見つけてその解決策を探る道標となる。文科省は新しい学習指導の理念を「探求学習」に求め、これを「AL(アクティブ・ラーニング)」と呼ぶ。ALは全11教科に盛り込まれた。

領土問題に関する高校教科書の記述=2021年3月24日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
領土問題に関する高校教科書の記述=2021年3月24日、東京都千代田区

新学習指導要領では、日本と世界の近現代史を融合した「歴史総合」や、防災などを学ぶ「地理総合」、主権者教育を行う「公共」、プログラミングが必須の「情報I」などが新設され、今回の検定で11科目136点が合格した。

これからの高校生たちには難問に果断に挑戦し、解決できる柔軟な能力を身に付けてほしい。それが揺るぎない日本の将来を創ることにつながる。

すべての教科書に「わが国固有の領土」という表現が登場した

今回の教科書検定は1年かけて実施され、教科書会社から298点の申請があり、検定意見が付いた修正を経て296点が合格し、1点が不合格となり、1点が申請を取り下げた。

沙鴎一歩が注目するのは、新学習指導要領に基づいて「地理総合」と「公共」の全18点で、北方領土(北海道)や竹島(島根県)、尖閣諸島(沖縄県)について「わが国固有の領土」という表現が登場したことである。

ちなみに検定意見による修正はたとえば、次のように行われた。

▼北方領土
 「現在も事実上、ロシアによって統治されている」
→「現在もロシアによる不法占拠が続いている」
▼竹島
 「閣議決定によって島根県に編入し、国家による領有の意思を公的に示した」
→「閣議決定によって公的に示した。残されている問題について日本は平和的な手段による解決に向けて努力している」
▼尖閣諸島
 「日本が実効支配している」
→「日本が実効支配しており、領有権の問題はないとされる」
▼慰安婦問題
 「従軍慰安婦など未解決の問題は多い」
→「従軍慰安婦など政府は解決済みとしているが、問題は多い」

それにしてもここまでくるのにどれだけ長い時間を費やしたことか。日本は敗戦国の負い目から韓国や中国などのアジアの国々の意見や立場に配慮して領土などに関する主張をきちんとしてこなかった。それが教育にまで浸透していた。これまで教科書にきちんと、固有の領土や歴史的事実が正しく明記されていなかったこと自体が、問題で異常なのである。