文章を「丸暗記」せよ

では、どうすればよいのか?

私は、それに対してきわめて明快な答えを持っている。それは、ある程度まとまった文章を丸暗記することだ。

20回程度を目安として、繰り返し声に出して読むだけでよい。ごく簡単だ。簡単であるにもかかわらず、その効果は絶大だ。

文章を丸暗記していれば、個々の単語の意味を苦労して覚えなくても、文脈に位置づけて、自然に覚えられる。前置詞の使い方なども、自然に習得できる。

「長い文章を全部覚える」という方法は、よく知っている言葉も含めて暗記するのだから(というより、ほとんど知っている単語で構成される文章を暗記するのだから)、一見したところ、効率が悪い。

しかし、実は最も効率的な記憶法なのだ。人間の記憶は、関連のない単語を孤立して覚えられるようにはできていない。意味のある、一定の長さの文章を覚えるようにできているのだ。

丸暗記というと、言葉のイメージがよくないため、「自由な発想を殺す」とか「非人間的だ」と考える人が少なくない。あるいは、「記憶力のよい人向けの方法だ」と言う人もいる。しかし、こうした考えは間違いだ。

ひとまとまりの文章、つまり、意味がつながった文章群を覚えるのは、個々の単語を覚えるよりもはるかに楽だ。しかも、一旦覚えれば忘れない。丸暗記こそ、暗記が苦手な人のための方法なのである。

黒板にアルファベット
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英語のスピーチで発見したこと

私がこの方法を始めたきっかけは、中学生のときに、学校の代表として英語のスピーチコンテストに出たことだった。草稿を最初から最後まで丸暗記しなければならなかった。

その過程で、つぎのことを発見した。

①部分部分ではなく、全文を連続して覚えるほうが容易。
②ある箇所を思い出せば、あとは自動的に思い出せる。
③単語を1つずつ無理して覚えなくとも、文章を暗記すれば自動的に覚えられる。

高校生になってからは、意識的にこの方法で勉強した。あるとき、このような方法を行っている者がほかにもいないかと思い、友人に聞いてみた。クラスで一人、やはり意識してこの方法を実行している者がいた。

彼の英語の成績は、非常によかった。そこで、これはひとりよがりの方法ではないと確信したのである。

最初は教科書を丸暗記した。他の教科の勉強をして疲れたら、息抜きのつもりで、英語の教科書を取り出して音読する。ただ読んでいるだけだから、精神的な緊張は必要ない。いつの間にか暗記できる。

いったん教科書を全部覚えてしまうと、個々の単語の意味は、文脈によって分かる。その箇所を思い出せなければ、別の箇所から始め、そこから思い出していく。だから、苦労せずに目的の箇所を思い出せる。