「新年度こそ英語をマスター!」と、毎年春に勉強をスタートするものの、結局続かず挫折する社会人があとを絶たない。これに対し、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏は「多くの日本人が間違ったやり方に陥っている」と指摘する。「社会人は独学でしか英語を学べない」と喝破し、「どこに集中し、どこで手を抜くか」限られた時間の中で外国語を習得するための方法を教示した新著『「超」英語独学法』から、目からウロコの方法を特別公開する──。(第3回/全3回)

※本稿は、野口悠紀雄『「超」英語独学法』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

日本人の英語力はアジアの中でも最低位

日本人の英語力はきわめて低い。アジア諸国の中でも、最低位に近い。しかも、私の印象では、時代の経過とともに日本人の英語力は低下している。最近の学生を見ていると、それを痛感する。

インターネットなど、英語学習に使える道具は長足の進歩を遂げているのに、日本人の英語力は、なぜ低いのだろう?

さまざまな理由が考えられるが、大きな理由は、学校での英語の教育法にある。私たちの時代の英語の授業は、「まず英語を読み、つぎにそれを日本語に翻訳し、さらに文法などについて説明する」という方式で進んだ。いまでもそのような方式が続けられているのではないだろうか?

これは、「英語の文章を単語に分解し、個々の単語を文法を用いて組み合わせ、翻訳することによって文章の意味を解釈する」という方法だ。

私はこの方法を「分解法」と呼んでいる。これが最大の原因である。こうした方法をとるために、英語を習得できないのだ。

英語教育
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単語をバラバラに覚える愚

多くの日本人の学生は、単語帳を使っている。1つひとつの単語を抜き出して単語帳に書いて覚えようとしている。しかし、こうした方法で勉強しても、単語は覚えられない。

単語帳で英単語を一所懸命に記憶しようとしている学生を見ていると、気の毒になる。まったく非効率的な勉強法だからだ。ましてや、「辞書を最初から一語一語覚えて、覚えたページを食べた」などという苦学物語を聞くと、信じられない思いだ(いまでは紙の辞書を使う人は少なくなったから、さすがにこうした人はいなくなっただろうが)。

彼らは、個々の単語を孤立し、独立したものとして覚えようとしている。これは大変な努力を必要とする勉強法だ。しかも、きわめて能率が悪い。個々の単語をバラバラに覚えようとしても、覚えられるものではない。

そのうえ、これは退屈きわまりない作業である。だから、「aから始めてabandonまできて投げ出したために、aで始まる単語だけやけに詳しい」などということが起こる。

退屈なだけでなく、他の単語と混同してしまう危険もある。辞書のつぎに出ている言葉と取り違えたという、ウソのような話もある。