安倍前首相は「早期解散論」の急先鋒
ちょうど同じ29日、菅氏が安倍晋三前首相と会ったことも、解散風をあおった。これには解説が必要かもしれない。昨年9月、菅氏に首相をバトンタッチして以来、安倍氏は菅氏に早期解散を進言し続けている。安倍氏は首相を辞任して以来、表立った動きを控えているが、衆院選の後は、最大派閥・細田派に戻って会長に就く考えだ。このため、派内の若手議員の選挙応援には全精力を使うつもりだ。
実は森喜朗元首相が2月、「女性蔑視発言」で東京五輪組織委会長を辞任した際、森氏は極秘に安倍氏に対し後継会長を打診している。その際、安倍氏は秘書を通じて「次の衆院選の後に派閥に戻るので仲間が選挙で勝ち上がれるように応援に専念したい」と伝え、辞退した。
五輪の成功よりも派閥の事情を優先させたことには残念な印象も残るが、安倍氏が次の衆院選に向けて燃やす執念がうかがえるエピソードだ。
これらの出来事が、「点」から「線」につながり、永田町を駆け巡っている。
内閣支持率下げ止まりで「勝てる」と踏んだ二階氏
二階氏は4月1日にも菅氏や森山裕国対委員長と首相官邸で「密談」。密談といっても、誰もが分かる場所で「何を話しているか気になる」場面を演出するのが、二階流だ。
それではなぜ二階氏が解散風を吹かせる理由は何か。当然ながら「勝てる」という判断がある。
政権発足時は7割近い支持を誇った菅内閣だが昨年11月ごろから支持は急落。30%台の「危険水域」に落ち込んだ。この段階では「早期解散は自殺行為。21年10月の任期満了近くの選挙になる」との見方が支配的だった。
しかし、ことし3月の最新データでは4割超に持ち直してきた。一方、野党第1党の立憲民主党は10%未満にとどまる。そして、野党各党間の衆院選挙区調整は遅々として進んでいない。「今なら勝てる」に変わったところで、二階氏が動きだしたのだ。