スカイマークの資本金は90億円から1億円に

著名企業が「減資」して「中小企業」になるというニュースが相次いでいる。格安航空会社のスカイマークが昨年12月に資本金を90億円から1億円に減らしたのに続き、毎日新聞社が3月末に、資本金を41億5000万円から1億円に減資、JTBも23億400万円から1億円に減資した。

2020年2月19日、東京・品川にある株式会社JTBの本社の全景
写真=アフロ
2020年2月19日、東京・品川にある株式会社JTBの本社の全景

通常、減資は業績悪化で繰越損失がたまった場合、資本金と相殺することで、その損失を消すために行われる。増資と組み合わせて「減増資」として行われることが多く、もともとの株主の持ち分を減らし、新規の株主が支配権を握って経営再建を進める手法としても使われる。

新型コロナウイルスの蔓延による経済停滞で、大打撃を被っているスカイマークやJTBは、大幅なリストラなどにも取り組んでおり、株主にも損失を負担してもらうという象徴的な意味もあるだろう。毎日新聞も長期低落傾向にあり、同社を傘下に持つ毎日新聞グループホールディングスの2020年3月期の最終損益は56億円の赤字だった。いずれも経営が大きくつまずいている状況にあるわけだ。

資本金1億円以下なら「中小企業」になり節税できる

経営難に直面して「減資」する、というのは分かる。だが、なぜ「中小企業化」なのだろうか。

指摘されているのは、資本金が1億円以下になれば税法上の「中小企業」となり節税できる、というものだ。

税法上、中小企業扱いになるとさまざまな優遇措置が適用される。例えば、中小企業には、法人税の軽減税率が適用される。大企業の法人税率は一律23.2%だが、減資して中小企業になれば、800万円までの所得に対しては税率が15%に軽減される。もっとも800万円を超えた部分には23.2%の税率が適用されるから、収益規模の大きい企業には、それほど大きなメリットがあるわけではない。

一番大きいのは、中小企業化すると「外形標準課税」が適用されなくなることだろう。外形標準課税は、事業所の床面積や従業員数、資本金、付加価値などをベースに課税するもので、税引き前損益が赤字になったとしても、税金の支払いが生じる。つまり、一定の規模があれば、仮に損益が赤字でも、応分の負担をしてもらおうというのが外形標準課税なのだ。

つまり、減資によって中小企業化する企業は、大企業であるという体面を放り投げてでも、税金の支払いから逃れようとしている、と見られているのだ。