株式会社の位置付けも、上場/非上場の区分も不明確な日本
ちなみに、欧州では資本の部がマイナスになる「債務超過」になると企業は倒産状態とみなされる。経営者は企業を存続させるために、必死に資本の出し手を探し、増資を引き受けてもらう。
ところが日本企業の場合、会社が倒産するかどうかは資本の多寡ではなく、銀行が資金を貸し続けるかどうかにかかっている。債務超過になっても金融機関などが支え続ければ、企業は倒産しない。
株式会社の位置付けも不明確だ。会社法の改正で資本金1円、株主1人でも株式会社を設立することができるようになったので、ごく小規模の個人会社も町の商店も、軒並み株式会社になった。
上場企業と非上場企業の法体系も明確に区分されていない。このため、大企業でも非公開会社のところが少なくなく、社債でも出さない限り、有価証券報告書など詳細な財務諸表を出す義務もない。つまり、社会的存在として重要性が増している企業にもかかわらず、あたかも個人企業のような法規制の下に安住している企業があるわけだ。
増資も同時に行い、経営再建に取り組むのが筋だ
今回、資本金だけを変えて中小企業になりすまし、社会的責任から逃れようとしていると疑われるような企業が相次いで出てきたことは、そうした法の不備を示しているわけだ。
さらに、企業は誰のものなのか、自分の会社はどんな責任を負っているのかを、経営者が真剣に考えていないことが、図らずも露呈した、ということだろう。
そうはいっても背に腹はかえられない、税金でも何でも社外流出を削らなければ会社が潰れてしまう、綺麗事は言っていられないのだ、と経営者は言うかもしれない。新型コロナの影響はそれほどに大きいのだ、と。
それならば、減資だけでなく、合わせて増資もきちんと行い、資本を増強して、経営再建に取り組むのが筋だろう。
万が一、誰も増資に応じてくれないのだとすれば、もはやその会社は社会的に存在意義を失っているということになるだろう。あるいは、経営を再建する方策を示し、自社の存在価値を社会に示すことができない経営者の能力欠如を示している、と言っても過言ではない。著名企業の減資・中小企業化問題は、会社の社会的責任とは何なのかという根本的な問いだといえる。