期限を切ることで「十分やれそうだ」と思いやすくなる

そこで効果的なのが「期限を切る」こと。「全力疾走しろ」と言われても、それが50メートルなのか、100メートルなのか1500メートルなのか、はたまたマラソンなのか、距離が分からなければ、走り始める前から不安で一歩目が踏み出せません。1500メートルやマラソンを最初から全力疾走しては最後まで走れません。

それと同じことで、部下にとっては「1週間」とか「残り2週間」とか期限を切られることによって、ゴールが明確になるのでペース配分が明確になることと、それ以上に、そのくらいなら頑張れると「十分にやれそう」な気がしてくるのです。

これが「プラスの兆し」です。

日付に丸印
写真=iStock.com/nigelcarse
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また、視野、視点を変えさせるには「いったん」という言葉が非常に効果的です。例えば、

「あきらめるとかあきらめないとか気持ちの部分はいったん脇に置いて、とにかく、今までと違うやり方を考えて、試してみよう」

気持ちを瞬間移動させる「いったん」の魔法

「いったん」は部下や新人の育成の場面では“魔法の言葉”といえるほど、重宝がられています。どんな言葉よりも、部下のネガティブな気持ちを負担なく、自然にポジティブな気持ちに瞬間移動させてくれます。

このフレーズは「いったん」という言葉を用いて、部下のネガティブな感情をストップさせて、そこに「今までと違うやり方」を試すことを促しています。

この「違うやり方」に、少しでも前のやり方より成果なり手応えが出れば、「あきらめたい」という感情は一気に萎みますので、ぜひ試してみてください。

最後に、理性的な判断をするタイプの人には、大局観も持って判断させるために、

「あきらめてしまうメリットって、どんなことがあると思う?」

と問いかけ、考えさせる方法があります。「あきらめたい」というのは感情ですから、理詰めで考えれば、どこからか辻褄が合わなくなります。そこを上司や先輩が指摘するのではなく、本人に気づかせるためにこのように問いかけるのです。

<「自分で考え、動く」を引き出す言い方 >

「あきらめるのはいつでもできるから、もう1回だけやってみようか」
⇒負担感を軽減させる
「もう1週間やってダメなら、あきらめるとして、それまで他の方法を試してみよう」
⇒期限を切る
「あきらめるとかあきらめないとかの、気持ちの部分はいったん脇に置いて、とにかく今までと違うやり方を考えて試してみよう」
⇒他の可能性に気づかせる
「あきらめてしまうメリットって、どんなことがあると思う?」
⇒視点を変えさせる