※本稿は、大塚寿『自分で考えて動く部下が育つすごい質問30』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。
ノルマを達成しない「スルー癖」のある部下
できる人ほどつい出ちゃう残念な言い方
「いい度胸してるね」
⇒言いたい気持ちはよくわかるが、相手の行動は変わらない
上から下りてきた目標やノルマを「やれ」と言ってもやらない部下。スルー癖が身についており、「できない人もいるからいいじゃん」「ホントにやらなきゃいけないならまた言ってくるだろうから、いいでしょ」と、上司の足元を見ている。「スミマセン」はすぐに出てくるので、暖簾に腕押し……といった部下です。
正直、こうした部下の存在の有無は、その企業や組織の風土と業績にもよると思います。目標の達成、未達成の議論ではなく、そもそも目標を最初からスルーしてしまう社員を抱えられるというのは、ある意味、経営的な余裕がないとできません。
組織によっては「退職勧奨」の要件が揃ってしまう場合もありますが、人事部や労働弁護士マターにする前に、まずは上司がマネジメントで、繰り返しあの手この手で行動変容を促すのが第一義です。
「自分で決めさせる」ことで行動変容を起こす
その上で大原則となるのは、上司が強く命令したり叱責したから「しぶしぶ」行動を起こすのではなく「自分で決めたことだから~」という自己決定を促すことです。
自己決定と、目標やノルマとのベクトル合わせを、本人と上司で行うのがセオリーですが、言い方は、
「○○さん、今期さ、『これ、やりたい』とか『これだけはやり切っておきたい』とか『達成しておきたい』っていう自己目標ある?」
という方向になるでしょう。
そのココロは「成長が実感できるような自己目標を設定させる」ことによって、“自分のために”、“自分の成長のために頑張る”ということで「やる気」に着火させるのです。
人は会社や上司に命令されたことより、「自分のために」「自分で決めたこと」のために頑張れるようにできています。
その特性を利用するのです。
「そんなんじゃ生ぬるい、そうした言い方はこれまでも試してきたけど効果がなかった」という場合は、叱るというコミュニケーションの様式を用いるのも「アリ」です。
ただし、このケース、言い方には気をつけないと逆効果になってしまうので、
「ひとつ聞きたいんだけど、○○さんの仕事に向き合うスタンス、それでいいと思ってる?」
といった質問をして、あくまで自己決定を促すようにしましょう。
「叱る」という文脈においては、これは部下の能力やスキルが高い場合に限定した言い方になりますが、
「○○さん、その△△△の能力を使わないのは罪だよ。発揮しない理由があるの?」
というのが、これまででもっとも効果を上げた定番の言い方になります。
叱責といっても、この表現には「期待を言葉にして伝えている」ニュアンスがあるので、言われた方は前向きに受け止めることができます。