トップアスリートは「無意識の声」に耳を傾ける

他には無意識を整えるのに、どんなことが有効でしょうか。

脳には、体の末端から上がってくるボトムアップの情報プロセスと、意識が体に伝えようとするトップダウンの情報プロセスの両方があります。

ボトムアップのプロセスは、その日の調子とかスランプとか、自分にどうしても与えられてしまう条件のようなものです。他方、トップダウンのプロセスは、ボトムアップのその報告を聞いて、意識的にそれをコントロールしようとするプロセスです。

トップアスリートは、毎日意識が、自分の調子を無意識のほうに聞いて、その答えによって、その日どういう練習を自分に課すか決めているところがあります。無意識の答えによっては、練習を早めに切り上げることもあるようです。

私はアスリートではありませんが、毎日10キロを走る身として、そう決めてはいるものの、その日の気温などの条件、体調によって、今日は暑いから早朝に5キロ、夕方5キロにしてみよう、とか、今日はこれだけの仕事をどうしても終わらせなければならないから、10キロ走る時間がとれないけれど、全く走れないよりましだから3キロでもいいから走ってこよう、とか、意識が無意識と対話をしています。

朝日の中で芝生の上をランニングする人の足
写真=iStock.com/BrianAJackson
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無意識のセットアップには「対話」が大切

無意識を良い状態にセットアップするのには、普段から意識と無意識とがよく対話していることが大切です。自分の無意識がどういう性質を持っていて、どういうことを課すとどういう反応をするのか、確かめていくことで、無意識を上手く整えることができるようになっていくのです。

先の「ルーティーン」というのも、意識が無意識と対話していった結果、自分は毎日このメニューでいくのがいいと、決まっていったはずです。実際、自分と対話ができる能力がある人は、優れた成績を残すことが多いのです。

私は、さまざまな人に相談を受ける機会があるのですが、自分の無意識を把握できていない人、無意識の言いなりになっている人、そして逆に、意識が無意識を抑え込もうとしている人というように、無意識と意識とがしっかり対話ができていない人が多いと感じます。

例えば「こうあるべし」という意識が強すぎて、体のほうが「いや、それは無理でしょう」と言っているのに、それでも続けて、体に無理が溜まって体調を崩してしまう。結局成し遂げられない、という人がいます。

また体に好き放題させるだけで意志がなく、どこにも向かっていくことができないような人がいます。