インバウンドはコロナ後も戻らない

すでに述べたように、ギンザ シックスがオープンしたのは2017年です。いっぽう、中国人による「爆買い」が流行語大賞をとったのは2015年。訪日外国人の中で、一人当たりの支出が最も多いのは中国人でしたが、2016年には早くも5位に転落し、インバウンド消費は大幅に減少しています。

ギンザ シックスは開発上の調整のため、出来上がるまで14年かかったと言われています。そのため途中で方向転換ができなかったのかもしれませんが、やはり狙いがズレていると言わざるを得ない。

爆買いをしなくなった中国人が、その代わりにどうしたかというと、「爆輸入」です。外国で買い物をして帰ると税関を通るときに面倒くさいし、外貨の規制などもある。それならECや輸入をしたほうがいい、というふうになっています。

また彼らが日本に旅行に来たときの行動も、爆買いという「モノ消費」から、スキーや温泉を楽しむ「コト消費」に変わりました。それなのにいまだに、「銀座のラグジュアリーな空間で、ショッピングをするのが最高の体験ですよ」と言い続けるのは、無理があるのではないかと思います。

あくまで中国人をターゲットにするなら、越境ECの天猫国際(Tモール・グローバル)での出店やプロモーションを強化したほうが、ずっと効果的です。

オンラインショッピングのイメージ
写真=iStock.com/Tevarak
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「おしゃれ」の定義が大きく変化した

百貨店のもう一つの問題点が、「アパレル頼み」であることです。ところがいまは洋服が売れません。アパレル業界の人たちも、百貨店の人たち同様、びっくりするほど消費者のほうを見ていない。いまは「おしゃれ」の定義がまったく変わったのに、気づいていないようなのです。いや、とっくに気付いているけど、けっして認めたくはない、ということなのかもしれません。

私もそうですが、バブル世代は洋服やブランドの価値を利用して、自分を実際以上によく見せようとします。ところがいまの若い世代は、「モノに頼って自分をよく見せるのはカッコ悪い」という感覚を持っていて、おしゃれに時間とお金と労力をかける人のことを、はっきり口に出しては言わないものの、下に見ている。以前この連載でも紹介したことがありますが(「なぜ伝統的な『グループインタビュー』に力を入れる企業はヒット商品を出せないか」)、「投影法」という手法を使って調査すると、そういう結果が出てきます。