もうすぐバレンタインデー。チョコを渡す意味は「本気の告白」「義理チョコ」「友チョコ」「自分へのご褒美」と短期間で大きく変化・拡大をしてきましたが、バレンタイン市場は健在。マーケティングのプロ桶谷功さんが、商品やイベントの“意味付け”に成功するケースと失敗するケースの違いに迫ります——。
ハート型チョコレート
写真=iStock.com/zepp1969
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バレンタインは、なぜ短期間に激変したのか

こんにちは、桶谷功です。もうすぐバレンタインデーですね。

私が中学生だったころの2月14日は、女子が好きな男子へチョコレートを贈る日でした。毎年、そわそわと落ち着かない1日を過ごしたものです。

ところが小学生になる私の娘にとってバレンタインデーとは、「仲のいい友達とチョコレートを交換する日」になっています。ここまで短期間に意味が変化したイベントはほかにないかもしれません。

バレンタインデーの発祥に関しては諸説ありますが、一般に風習が広まってきたのは1970年代です。当初は、「女性から男性にチョコレートをプレゼントすることで、愛の告白をする日」でした。それがいつしか、「日頃お世話になっている男性へ、女性が恋愛感情ぬきの“義理チョコ”を贈る日」となり、いまは「友達どうしで“友チョコ”を交換する日」になった。

なぜこんなにも意味の拡大解釈が繰り返されてきたのでしょうか。

メーカーが“義理チョコ”を広めた

大きな理由は、チョコを贈ることの意味が拡大すれば、マーケットが拡大することです。

当初、チョコレートを渡すという行為は「本気の告白」でした。しかし徐々に、「日頃のお礼」とか、「季節のごあいさつ」のような意味合いも含むようになった。おそらく最初の拡大解釈が行われたのは、メーカーが、“義理チョコ”を広めたときのようです。

マーケットが拡大するときというのは、大きく分けて次の3つのパターンがあります。

(1)人が広がる
(2)シーンが広がる
(3)目的が広がる

バレンタインデーは、(2)の「シーン」は2月14日で固定されていますが、(1)の「人」と、(3)の「目的」が大きく広がったことで、新しいマーケットを開拓したのです。