なぜ、AIとの雑談は飽きてしまうのか

ここで具体的な事例を一つ挙げます。システムは「東京生まれだよ」「牛込で生まれたよ」「英文学者だよ」「俳句、漢詩、書道をたしなんでいたよ」「朝日新聞で小説を発表したよ」というヒントを順に出します。これが誰のことか分かるでしょうか?

答えは夏目漱石です。このシステムは単純なロジックで動いていましたが、当時人気がありました。クイズが面白いこともありましたが、システムが徐々に簡単なヒントを出していく様子に何らかの意図が感じられたのです。

東中竜一郎『AIの雑談力』(角川新書)
東中竜一郎『AIの雑談力』(角川新書)

お掃除ロボットのルンバにしてもそうです。ルンバの目的は部屋をきれいにすることです。その目的のために部屋をぶつかりながら進んでいきます。多くの人がルンバに対して意思を持っているように感じるでしょう。だからこそ、愛着がわき、多少問題があっても使っていくのだと思います。

現状の雑談AIとの対話は正直飽きます。何時間も話し続けられるものではありません。その原因として基本的な対話能力の低さもありますが、意図の問題が大きいのではないかと思います。「意識」まで踏み込まないにしても、何かしらの目的をもって対話をする、対話を目的とするのではなく対話をツールにする、そのようなパラダイムシフトが必要だと思います。

意図のないシステムと話すことはテニスの「壁打ち」のようなものです。「壁打ち」を「相手のいる競技」にしていくことで飽きの来ない雑談AIにつながるのだと思います。

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