どうすれば話し合えるようになるのか

人文系の研究者と対話システムの現在について言語処理学会でパネルディスカッションを行う機会がありました。その時のテーマは対話破綻だったのですが、1人の研究者に「人間は対話破綻はしない。対話が破綻するのは人間関係が破綻したときだ」と言われました。人間は対話に問題があっても、理解し合いたい意図がある限り、対話を止めないだろうというのです。確かにそう思います。

対話破綻がゼロにならなくてもよいのです。そこから話し合えればよいのだと思っています。どうすれば話し合えるようになるのでしょうか。私はシステムが意図を持つことがその解決につながるのではないかと思っています。

2体のアンドロイド
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システムの意図については、私が主導した対話システムライブコンペティションでも問題として挙がっていました。私が収集した雑談対話データの中で、エラー類型として頻出していたものの一つが「発話意図不明確」だったのです。また、対話システムライブコンペティションのアンケートでも「システムの意図が不明確」であることが指摘されていました。

現在のシステムが抱える欠陥とは

現在のシステムは一般に意図を持ちません。ほとんどシステムは対話を続けることが目的になっていて、何がしたいというものを持っていない。だから対話が破綻することは失敗なのです。しかし、意図を持っていたら対話破綻は終わりではなくなります。

外国語で相手にうまく伝わらない場合、他の言い方で伝えようとするでしょう。特にトイレを探しているようなときであればなおさらどのような手段を使っても相手に伝わるように頑張るでしょう。意図があることで、少々対話が破綻していようが、問題ではなくなるのです。

平田オリザさんの著書に『わかりあえないことから』があります。その中でも人間の相互理解は分かり合えないことから始まると書かれています。まさにその通りだと思います。

私が作ったシステムにクイズ型対話システムがあります。これは人物当てクイズを出してくるシステムでした。ウィキペディアの任意の人物を取り上げて、その人物に関わるヒントを一つずつ出してきます。ヒントはウィキペディアの文章から自動的に生成され、答えが思いつかないだろうと思われる順にユーザに提示されます。インターネット上のサービスで、ユーザが考えている人物を当てるアキネーターというサービスがありますが、この逆を行く対話です。