あらゆる分野に共通するメタ認知の欠如

この現象は、政治、運転への自信、金融知識などあらゆる分野で見られることがわかっています。実際、次のような調査結果もあります。

①運転をする人を対象に運転のうまさについて聞くと、約8割の人が自分は平均以上の運転センスを持っていると回答した。
②エンジニアの約4割が、自分の能力は、その企業のエンジニアのトップ5%に入ると考えていた。
③約7割の大学教員が、自分の教育能力をトップ25%に入ると考え、約9割が平均以上の教育能力を持っていると考えていた。

これらは、自分自信の思考や行動について第三者の視点から捉え、正しくみなす能力である「メタ認知力」の欠如が原因です。

“間違った自信”による負の影響

筆者の研究でもこの現象は再現ができており、大学生では、成績が悪い人ほど、自分の成績を、実際より良く予想していました。これらの人では前頭葉の一部の体積が、正しく予測できる人より小さいこともわかっています。

学習場面においては、成績が数値として見えてくることで、「自分の成績が予想より悪かった」ことをきっかけにメタ認知の修正ができる人もいます。

一方、社会人にとっては、本人の予想と実際の成績の差を目の当たりにする場面が少ないことが、メタ認知の修正につながらず、できない自信家を蔓延させるのでしょう。

特にダニング・クルーガー効果にとらわれている本人は、自分を優れていると思い込んでいるため、学ぶことや必要な努力をする意欲を持っておらず、さらに、自信過剰なため、他者の意見を聞かなかったり、自分の評価が低いという不満を持ったりすることが多くなります。これは社会集団の中では害になり得ます。