成績が良い子と良くない子で、同じ文を見せても大きく反応が違う。そんな実験結果があります。脳科学が専門の細田千尋先生は、両者の違いの根本には「メタ認知」があると指摘。3種類のメタ認知について詳しく解説します――。
教室で楽しそうに学習する女の子
写真=iStock.com/Tomwang112
※写真はイメージです

成績の良しあしで反応が分かれる2つの文

成績が良い子と良くない子の違いは何にあるのでしょうか?

例えば、小学校高学年くらいの子どもに、以下の2つの文を提示し、どちらの文が理解しやすく、覚えやすいかについてその理由とともに尋ねると、成績が良い子どもと良くない子どもとで、その回答に大きな違いがでてきます。

①力持ちの男性が、自分の友人がピアノを動かすのを手伝った。
②力持ちの男が、朝食の間に新聞を読んだ。

これは古典的な研究成果の一つなのですが、成績の良い子たちは、①を選び、その理由について「力持ちであることはピアノを動かすことと密接に関連するが、新聞を読むことは力持ちであることと全く関係がないため」と答えることができます。一方、成績が悪い子どもたちは、どちらが理解しやすいかを判断することができず、さらにこの理由を的確に答えることができません。この理由が十分に理解できていない子どもたちは、さらに、②のほうが、文章が短いから理解しやすい、という回答に至ります。

このように文章の長さのみで考える子どもは、あまり考えず(理解せず)に、文章を丸暗記する傾向があるため、記憶課題の成績の悪さにつながると考えられています。

成績の良しあしを決める根本にあるもの

この成績の良しあしを決めている違いの根本に何があるのかといえば、「メタ認知」の違いであるといえます。メタ認知とは、最近広く知られていますが、認知の認知です。つまり、自分が理解する・覚える・考えるといったさまざまな認知活動を、もう一段高いレベルから捉えた認知のことで、現在進行中の自分の思考や行動そのものを対象化して認識することにより、「何が分かっていて、何が分かっていないのかが分かる」ことにつながります。