未就学児には、方法を何度も教える必要がある

一方で、5歳未満の子どもは、効果的な方略を指示されるとその時はそれを実施できる一方、それを自分のメタ認知的方略として維持することができないことがわかっています。例えば、「覚えるときは繰り返しましょう」と言われれば、その通り繰り返して覚えることができるのに、「繰り返しましょう」とその都度言わないと、その方法を自ら行うことができないのです。さまざまな研究から、記憶するのにどのようなストラテジーを取れば良いのか、という知識を持ってそれを適切に利用することは、6~11歳の時に飛躍的に発達することが示されています。

幼稚園児や小学校低学年の子どもに、忘れ物をしないようにどうしたら良い? なくし物をしないためにどうしたら良い? という「方法」を問い、なんとかそこを理解させることで忘れ物やなくし物をしないようにさせよう、とするのに、“また忘れた! また無くした! どうしてあんなに方法を伝えたのに”と思うことがあるかもしれません。

でもそのくらいの年齢の子どもには、そのメタ認知的方略を、自分のものとして適切に利用できるだけメタ認知が発達していないので、一度や二度その問いを繰り返し、方法を答えさせても、効果的ではないのです。ただしもちろん個人差があることも知られており、未就学児の5、6歳からでも、どうして自分はそれを覚えられたのか、きちんと説明ができ、方略を使うことができる子どもがいることも示されています。

なぜ「分かったつもり」がおきるのか

幼稚園児に、何枚かの絵を見せ、これを全部覚えてください、と少しの時間を与えると、多くの園児は、覚えた、と言うにもかかわらず実際にはほとんど覚えていないことが示されています。つまり、子ども(幼稚園児―小学校2年生程度まで)では、メタ認知が未発達であるため、覚えたつもり、になっていることが大半であることが明らかになっています。

これは、記憶に関するメタ認知だけではなく、理解に関するメタ認知も同じ傾向があります。小学校1年生から3年生を対象に、ある一部の説明を省いた上で、ゲームをやらせてみたところ、小学校1、2年生は説明を聞いて分かったつもりになり、ゲームを始めてから、初めて、その説明ではゲームをすることができないことに気がつきます。

一方、3年生くらいになると、ゲームを始める前に、足りない説明の部分について事前に質問ができるようになることがわかっています。